いまさら聞けない! NFPA基本の基本【第6回】2018年のNFPA79の改定に最適なサーボモータ用のケーブルとは?

2019/08/06

  • LAPP

砂川 裕樹

熱硬化性樹脂の絶縁体で、かつリステッドの認証済のケーブルなら安心!

いまさら聞けない! NFPA基本の基本 シリーズ
【第1回】NFPA70とNFPA79の違い。勧告なのに、なぜ遵守する必要があるの?
【第2回】NFPA70とNFPA79は過去にどう改訂された? NFPA79の2007年改定で日本が騒然となった理由
【第3回】NFPA79の2007年の改定は茨の道? またもや思わぬ弊害が発覚!
【第4回】大手自動車メーカーで起きたNFPA70に関する重大なトラブルとは?
【第5回】NFPA 2018年版改訂ポイント|今までのモータ用動力線が使えなくなる!?

いよいよNFPAの連載も佳境に入ってきましたので、まずは前回までの振り返りをしたいと思います。前回は2018年のNFPA79に関する最新の話題を取り上げました。覚えていらっしゃいますでしょうか?


第4章 4.4.2.8項の「電力変換設備からの電源回路」に関する記述では、「その動力線について、特定の規格を取得したケーブルを使う」という規定が追加され、リステッド認証を伴ったRHH、RHW、RHW-2、XHH、XHHW、XHHW-2のマークのあるケーブルを使うことになりました。

逆にいうと、従来の「PVC」(ポリ塩化ビニル)などの絶縁体ケーブルは使えなくなったのです。今後、サーボアンプなどに使うケーブルについては「熱硬化性樹脂の絶縁体で、かつリステッドの認証が必要」になります。モータに電力を供給するケーブルには、サージや静電浮遊容量に影響しない高品質なケーブルが求められます。

そこで「絶縁体に架橋ポリエチレン(XLPE)を採用し、リステッド認証を取った動力ケーブルを使えば心配がなくなります」というところまで、前コラムで解説したのでした。今回は、このような条件を満たす最適な動力ケーブルについて、具体的に紹介したいと思います。

私たちはLAPP社のケーブルを取り扱っています。この中で、特にサージに強く、電気的なスパイクや、インバータ制御などで悩ませられがちなコモンモード電流によるノイズを保護でき、パフォーマンスを最大限に引き出せる製品として「ÖLFLEX VFD 2XL」が挙げられます【★写真1】。
 
    【★写真1】サーボアンプ&サーボモータ用に最適なLAPP社の「ÖLFLEX VFD 2XL」(カタログからの抜粋)

 


現物の写真を見てみましょう。ケーブルの外皮には、以下のような記述があります【★写真2】。

「TC-ER RHW-2」
「WET or DRY 600V/2000V」
   

 【★写真2】ここに注目! 「ÖLFLEX VFD 2XL」の外皮の記述その1。
「(UL)TC-ER RHW-2 90C WET or DRY 600V/2000V」


これにより、本製品がTC-ERにもRHW-2にも適合しており、2000Vまでの耐電圧が保証されていることを理解できるでしょう。もちろん耐油性(OIL RES I/II)もあります。2018年のNFPA79改定におけるサーボモータ用として、まずはÖLFLEX VFD 2XLならば、どこでも胸を張って使えることをご確認ください。


ちなみに第4章 4.4.2.8項に書かれているRHW-2とは「Rubber Heat and Water resistant」の略称で、90℃の乾いた場所及び湿った場所に対応した熱硬化性を意味します。この「Rubber=ゴム」という言葉に引っかかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでいうラバーとは、少しややこしいのですが、ゴムのことではなく、熱硬化性樹脂を指しています。したがって架橋ポリエチレン(XLPE)も含まれます。ÖLFLEX VFD 2XLは、RHW-2の規格も取っているわけです。



ロボットシステムなどに使う屈曲用ケーブルの適用はどうする?

ただし、話はそれだけでは終わりません。一般的に架橋ポリエチレン(XLPE)ケーブルは、固定配線をして使う場合には全く問題はないのですが、ロボットなどの可動部分で使う場合には、それほど適しているとは言えないのです。というのも熱硬化性樹脂はケーブルとして固いためです。

またまた話がややこしくなるのですが、ただ従来の屈曲用ケーブルに使われていた熱可塑性樹脂が、サーボモータ用として絶対に使われないかというと、実はそういうことでもありません。2018年版のNFPA79 4.4.2.8項では例外事項が加えられており、「~もしくは電力変換装置製造者(インバータやサーボアンプメーカー)のマニュアルに基づき選択されなければなりません」と記載があります。

規格特有の非常に分かりにくい記述ですね…。簡単にいうとサーボモータやアンプのメーカーによるお墨付き(指定)がありマニュアルに『〇〇のVFDケーブルを使用すること』と記載があれば、熱可塑性樹脂のケーブルでも使って良いということです。


まとめ

さて、ここまで説明してまいりました、2018年版のNFPA79の改訂についてですが、みなさんはどのような印象を持ちましたでしょうか?

以下に要点をまとめました。
・VFD向けケーブルが、熱可塑性樹脂のケーブル使用不可になった
・RHH、RHW、RHW-2、XHH、XHHW、XHHW-2のマークのあるリステッド認証品が新たに認められた
・上記リステッド認証品でなくても、VFDメーカーのお墨付き品であれば認められる

実は、NFPA(北米防火協会)参加メンバーの様々なベンダーからあまりに制限が厳しすぎるので、改訂を望む声も挙がっています。今回改訂された規格で定められたXLPEケーブルは、固定設置であればよいのですが、稼動設置に向かないため、稼動エリアには何を使ったらいいのか、という新たな問題を生んでしまったためです。LAPP社を含め、様々なケーブルメーカーが独自の技術で静電容量を抑え、部分放電開始電圧をVFD向けに最適化し、さらに屈曲性が優れたケーブルを開発してきましたが、それさえも、結局はVFDメーカーのマニュアルにて指定されないと使えなくなってしまいました。

……うーん、どこかで聞いた話と思いましたが、2007年の改訂で生まれた問題と似ていますね。こちらについては第三回のコラムでお話しましたので、ぜひご参照ください。
いまさら聞けない! NFPA基本の基本 【第3回】NFPA79の2007年の改定は茨の道? またもや思わぬ弊害が発覚!

もしかしたら過去同様に、規格の緩和がくるかもしれません。
北米の各州が2018年版NFPA79を採択するのもまだ先の話かもしれません。
多くの機械メーカー様は現状、情報収集に努め、今後の動向を見ている段階のように個人的に感じております。
しかし、緩和がくるかどうかは誰にもわかりませんし、規格に準拠するのに早いに越したことはありません。

LAPP社では、2018年版NFPA79に準拠したXLPEケーブルも標準品としてラインナップしております。
詳細な情報につきましてはぜひ担当営業もしくは弊社問い合わせ先までご一報ください。




今回のコラムはこれで終わりです。次回は、ついに最終回を迎えます。LAPP社のVFDケーブルのラインアップについてまとめてみたいと思います。

★関連製品
ULリスティング ケーブル→https://www.kmecs-automation.jp/standard/002/cable/
ULレコグニション ケーブル→https://www.kmecs-automation.jp/standard/019/cable/






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砂川 裕樹プロダクトマネージャー

Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。

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