ケーブルグランド基本の基本(後編)~これで解決! 事例で学ぶ最適なケーブルグランドの選択法
2025/06/23
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増田 将吾
ケーブルグランドは、ケーブルやコネクタの固定、防水、緩み防止などを行い、作業効率を大幅に向上させる重要なアイテムです。
「制御盤が大きくて作業しづらい…」「ケーブルグランドが密で取り付けにくい…」「シールド処理に時間がかかる…」といった、現場でよく遭遇するお困りごとはありませんか?本記事では、これらの課題を解決するために、最適なケーブルグランドの選び方を事例を交えて紹介します。
なお、前編「ケーブルグランド基本の基本(前編)」では、LAPP社のカタログを使ったケーブルグランドの選び方を解説していますので、あわせてご覧いただくとより理解が深まります。
【目次】
ケーブルグランドとは
ケーブルエントリーシステムとは?
ケーブルコネクタとは?
困りごとや課題を解決! 5つの事例で学ぶ最適なケーブルグランドの選択法とは?
■課題① 制御盤が大きくて、ロックナットの取り付けが一人では難しい!
L【解決策】背面ロックナットが不要な「SKINTOP CLICK」を導入!
■課題② 食品機械で丸洗いに対応できるケーブルグランドが欲しい!
L【解決策】ステンレス製の「SKINTOP HYGIENIC」を導入!
■課題③ シールドケーブルの処理に手間と時間がかかっていた
L【解決策】「SKINTOP BRUSH ADD-ON」で誰でも簡単にシールド処理が可能!
■課題④ ケーブルグランドが密の状態で、本体に取り付ける作業ができない!
L【解決策】専用レンチセット「SKINMATIC QUICK Set1」を利用!
■課題⑤ ハーネス済のケーブルを制御盤内に取り込みたい!
L【解決策】ケーブルエントリーシステム「KDLシリーズ」を使う!
最適なケーブルグランドを見つけた後は「SKINTOP®シリーズ」で安心の導入を
樹脂製、金属製、ステンレス製の選択肢
樹脂製(プラスチック製)
金属製
ステンレス製
SKINTOP®を支える機能とアイテム
SKINTOP® CLICK:ワンタッチ取り付けタイプ
SKINTOP® BSなど:ケーブル屈曲防止機能
SKINTOP® BRUSH:シールド処理
SKINDICHT® BLK-など :穴埋めキャップ
SKINTOP® DIX-Mなど:各種シール
ケーブルグランドとは?
ケーブルグランドは、制御盤や中継ボックスなど、機器のケーブル取り出し口に取り付ける重要なアクセサリです。
主にケーブルの固定や緩み防止を行い、さらに水や油、粉塵の侵入を防ぐ防水・防塵機能を提供します。ケーブルやコネクタの接続部分をしっかり保護するためにも、ケーブルグランドの選定は非常に重要です。また、ケーブルに対する引っ張りやストレインリリーフ効果を持ち、ケーブルの損傷を防ぐ役割も果たします。特に、気密性や施工性、難燃性、ノイズ対策など、さまざまな環境条件に対応する能力が求められる重要な部品です。
ケーブルエントリーシステムとは?
このように、ケーブルグランドは1本1本のケーブルを安全に導入・保護するために使われます。しかし、ケーブルの本数が多い場合や、より効率的に整理・施工を行いたい場合には、「ケーブルエントリーシステム」が効果的です。
ケーブルエントリーシステムは、ケーブルグランドと同様に防水・防塵性やストレインリリーフ機能を備えているだけでなく、複数のケーブルやハーネスを一括で導入・整理できるという特長があります。これにより、作業効率の向上や制御盤内のスペース確保がしやすくなります。
特に、後ほど紹介する「■課題⑤ ハーネス済のケーブルを制御盤内に取り込みたい!」というケースでは、このケーブルエントリーシステムが有効な解決策となります。
ケーブルエントリーシステムの記事はこちら→「ケーブルエントリーシステム」一つあれば、10本以上のケーブルもらくらく配線&簡単メンテナンス!
多くのケースで、ケーブルグランドとケーブルエントリーシステムは用途や現場に応じて使い分けられ、場合によっては併用されることで、機器の密閉性や安全性がより高まります。
ケーブルコネクタとは?
ケーブルコネクタは、ケーブル同士やケーブルと機器を電気的に接続するための部品です。信号や電力を安全に伝送するために使われ、プラグとソケットの組み合わせで構成されることが一般的です。
また、工場や屋外、食品機械などの水や油がかかる環境では、防水性能を備えたケーブルコネクタが求められます。これにより、コネクタ部分への水の侵入を防ぎ、安全性と信頼性を確保できます。
なお、ケーブルグランドは「ケーブルコネクタ」「コードクランプ」「ケーブルシール」「貫通ブッシュ」など、さまざまな名称で呼ばれることがありますが、「ケーブルコネクタ」という表現は誤解を招きやすいことがあります。ケーブルグランドと接続用コネクタは目的が異なります。
ケーブルグランドが「固定・保護」を目的とするのに対し、ケーブルコネクタは「接続」が主な役割となります。
困りごとや課題を解決! 5つの事例で学ぶ最適なケーブルグランドの選択法とは?
ケーブルグランドの選定に悩んでいる現場の方々にとって、どの種類の製品を選べばいいのか迷ってしまうことは少なくありません。実際、ケーブルグランド・エントリーの選定が適切でないと、施工性が悪化したり、長期的なトラブルの原因となることもあります。
さて、ここからは、よくある現場の困りごとを紹介し、それぞれのケースに最適なケーブルグランドの種類と選び方を解説していきます。これらの事例を参考にして、より効率的で確実な選定を行いましょう。
■課題① 制御盤が大きくて、ロックナットの取り付けが一人では難しい!
システムに使用される制御盤のサイズはさまざまで、なかには非常に大型の筐体も存在します。こうした大きな筐体では、ケーブルグランドの取り付け作業が一人では難しいという声をよく耳にします。
従来の取り付け方法では、
・一人が筐体の外側からケーブルグランド(またはケーブルクランプ)を挿入し、
・もう一人が内側からロックナットを締める。
という“二人作業”が必要になります。
しかし、「ただケーブルグランドを1つ取り付けるだけ」なのに、毎回2人がかりでの作業が必要となるのは、やはり非効率です。
【解決策】背面ロックナットが不要な「SKINTOP CLICK」を導入!
そこで、ある企業は企業はLAPP社製のケーブルグランド「SKINTOP CLICK」を導入しました。
SKINTOP CLICKはその名の通り、筐体の穴に“カチッ”と押し込むだけで簡単に取り付けが可能な構造。
背面にはツメがついており、自動的に引っかかって固定されるため、従来必要だった背面からのロックナット作業が不要になります。
さらに、前面ナットで締めるだけでしっかり固定できるため、ケーブルやコネクタの防水・防塵性を確保しつつ、1人でも確実に取り付け作業が完了します。
ケーブルグランドを選定する際は、製品価格だけでなく、取り付け作業の工数や人員への影響も含めて検討することが、結果的に現場全体のコスト削減につながるという好例です。
■課題② 食品機械で丸洗いに対応できるケーブルグランドが欲しい!
ある企業では、食品機械を洗剤で丸洗いする作業を行っていました。金属製のケーブルグランドを使用していたため、洗浄後に錆びてしまう問題が発生しました。この錆びつきが原因で、衛生面や安全面に懸念が生じていました。
金属製のケーブルグランドは、定期的な洗浄作業により劣化が早まり、衛生管理や製品の品質維持に影響を与える可能性が高くなります。
【解決策】ステンレス製の「SKINTOP HYGIENIC」を導入!
そこで、LAPP社の「SKINTOP HYGIENIC」を導入しました。
この製品は、ステンレス製で錆びに強いだけでなく、全体的に丸みを帯びた凹凸の少ないデザインが特徴です。そのため、汚れやカスが付着しにくく、衛生的に非常に優れています。
さらに、洗浄・消毒分野の業界標準であるECOLAB社の洗浄薬品試験にも合格しており、信頼性にも定評があります。また、保護構造はIP68-10bar、またはIP69に対応しており、厳しい環境にも耐えられる性能を持っています。温度範囲は-20℃~+100℃で、幅広い温度条件にも対応可能です。
加えて、パーツにはブルーのパッキンやOリングが使用されており、万が一、食品に破片などが混入してしまった場合でも、すぐに視認できるよう配慮されています。
■課題③ シールドケーブルの処理に手間と時間がかかっていた
シールド処理とは、ケーブル内部の信号線を外部の電磁波やノイズから保護するため、ケーブルに導電性の層を施す作業です。
ある企業では、ケーブルからシールド線を引き出し、線を撚って接地用の端子を取り付け、その後テープを巻くという一般的なシールド処理を行っていました。
しかし、この作業は非常に手間がかかり、熟練した作業者でないと時間がかかってしまいます。
ところが、作業者が退職してしまったため、従来通りのシールド処理が難しくなりました。これにより、手軽にシールド処理を行う方法を探す必要が生じました。
【解決策】「SKINTOP BRUSH ADD-ON」で誰でも簡単にシールド処理が可能!
そこで、LAPP社の「SKINTOP BRUSH ADD-ON」を導入しました。
この製品は、ロックナットに金属ブラシが付いているケーブルグランドです。
あらかじめケーブルのシールド部分を一部だけ剥いておき、ロックナットを締めることでシールド部と金属ブラシが接触し、筐体への接地作業が自動的に完了します。この方法により、作業者を問わず簡単にシールド処理ができ、作業効率が大幅にアップしたとのことです。
■課題④ ケーブルグランドが密の状態で、本体に取り付ける作業ができない!
制御盤の筐体にケーブルグランドを取り付ける際には、レンチなどの工具を使って締め付け作業を行う必要があります。
しかし、ケーブルグランドが狭いスペースに密に並んでいる場合、レンチが入らず、取り付け作業に大きな手間がかかることがあります。
実際にある企業では、ケーブルグランドが狭いスペースに密に配置されていたため、レンチがうまく入らず、取り付け作業が非常に困難になったという問題が発生しました。
【解決策】専用レンチセット「SKINMATIC QUICK Set1」を利用!
LAPP社の専用レンチセット「SKINMATIC QUICK Set1」。非常に狭い空間でもケーブルグランドを取り付けられる。
そこで、LAPP社の取付け用Mネジレンチセット「SKINMATIC QUICK Set1」を導入しました。
この専用レンチセットは、非常に狭い空間でもケーブルグランドと工具の干渉を避け、簡単に取り付けることができるよう設計されています。
オープンラッチシステムを採用しており、ワンタッチで簡単に開閉・着脱できます。また、トルク管理機能を備えたモデルもあり、精密な取り付けが可能です。
■課題⑤ ハーネス済のケーブルを制御盤内に取り込みたい!
ある企業では、制御盤にハーネス済みのケーブル(コネクタ付きケーブル)をそのまま筐体の穴に通そうとすると、コネクタ部分が引っかかってしまい、スムーズに出し入れできない課題を抱えていました。
そのため、ケーブルの片側のみを未処理の状態で筐体に通し、後から現場でハーネス加工を施す必要がありました。しかしこの方法では、作業時間が大幅にかかる上に、現場での追加工の負担も大きく、生産性の低下が問題となっていました。
【解決策】ケーブルエントリーシステム「KDLシリーズ」を使う!
MurrPlastik社のケーブルエントリーシステム。ハーネス処理がされたケーブルを使用したい場合に非常に便利。
そこで、某企業では、ハーネス済みのケーブル(コネクタ付きケーブル)でも制御盤内に簡単に引き込み・整理できるMurrplastik社のケーブルエントリーシステム「KDLシリーズ」を導入しました。このケーブルエントリーシステムは、システム本体、フレーム、グロメットで構成されています。
まず、エントリーシステム本体を取り付ける筐体の穴に、ハーネス済みケーブル(コネクタ付きケーブル)をまとめて通します。次に、各ケーブルをエントリーシステム本体の穴に差し込み、スリット入りのグロメットで挟んで固定します。最後に、前面からフレームを取り付ければ作業は完了です。
グロメットは2mmから30mmのケーブル径に対応しており、ASIケーブルにも対応可能です。このシステムは、場合によってはケーブルグランドよりも簡単で省スペースかつきれいにケーブルを整理できるケースもあります。
Murrplastik社のケーブルエントリーシステムには、ハーネス済みケーブル(コネクタ付きケーブル)および未加工のケーブルに対応する多様な製品があります。
防爆雰囲気(可燃性ガスや可燃性液体の蒸気が空気中に存在する状態)で使える製品や、食品機械に対応するステンレス製なども用意しています。
最適なケーブルグランドを見つけた後は「SKINTOP®シリーズ」で安心の導入を
ケーブルグランドの選定で重要なポイントを理解した後は、実際に現場で使用する製品を選ぶ必要があります。
LAPP社の「SKINTOP®シリーズ」では、さまざまな素材や設計の製品を取り揃えており、現場に合わせて最適な選択が可能です。
LAPP社のケーブルグランドには、その材質によって、樹脂製/金属製/ステンレス製があり、関連製品としてロックナットが不要なワンタッチ取り付けタイプや、ケーブル屈曲時の断線を防止する保護機能を備えたパーツなどを用意しています。
そのほかにも、複数のケーブル使用時に併用する各種シールや、シールド処理、穴埋めキャップなど、現場での課題に応える多彩な関連アイテムもラインナップされています。
LAPP社のケーブルグランドのラインアップ。前半で説明した選定ポイントから、使用場所に最適な合った製品を選ぶとよい。
樹脂製、金属製、ステンレス製の選択肢
樹脂製(プラスチック製)
多くの用途で使用される一般的なタイプで、ケーブル適合径が広いため、さまざまなケーブルに対応可能です。M/PG/NPT/PFネジに対応した製品もあり、取り付けやすさも魅力です。
金属製
耐熱性に優れ、-70℃という低温でも使用可能。高温環境での作業に最適です。
ステンレス製
錆びにくく、汚れが付きにくい設計が特徴です。特に食品業界や衛生管理が求められる環境での使用に適しています。
SKINTOP®を支える機能とアイテム
SKINTOP® CLICK:ワンタッチ取り付けタイプ
ロックナットが不要で、取り付け作業の効率化を図り、作業者の負担を軽減します。
SKINTOP® BSなど:ケーブル屈曲防止機能
ケーブルが曲がりすぎて断線するリスクを減らし、長期間にわたって安定した性能を維持します。
SKINTOP® BRUSH:シールド処理
シールドケーブルの簡単な処理を実現し、ノイズ対策が求められる環境で活躍します。
SKINDICHT® BLK-など :穴埋めキャップ
ネジ穴をしっかりと塞ぎ、防水・防塵効果を維持します。
SKINTOP® DIX-Mなど:各種シール
ケーブルの本数や径に応じて使い分けできるシールで、複数のケーブルを1つのグランドでまとめたり、密閉性を高めるのに役立ちます。多孔タイプや交換式などがあり、防水・防塵性能を損なうことなく柔軟な設計を実現します。
中でも、LAPP社のケーブルグランドで代表的な製品といえば「SKINTOP® STシリーズ」でしょう。このシリーズの最大の特長は、業界トップクラスのケーブル適合径の広さにあります。
たとえば、M16サイズで他社製品と比較すると、SKINTOP® STシリーズは4~10mmと、より広い適用範囲をカバーしています。
少ない種類でカバーできるため、品番管理がラクになり、調達部門で誤発注や製造部門で誤使用のリスクが抑えられます。
LAPP社の「SKINTOP STシリーズ」は業界最大のケーブル適合径なので、品番管理がラクになり、調達部門や製造部門でのミスが低減される。
「SKINTOP®シリーズ」は、さまざまな現場のニーズに対応できる優れた製品群です。現場での作業効率や安全性を向上させるために、最適な製品を選んでください。
なお弊社では、今回ご紹介したLAPP社のケーブルグランドについて、サンプルボックスの貸し出しをスタートしました。
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ご希望の方は、弊社インサイドセールス部(insidesales@kmecs-automation.jp)まで、ご連絡いただければ幸いです。
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増田 将吾プロダクトマネージャー
主にMurrplastikやBinderを担当しています。
ヨーロッパの優れた製品を幅広く皆様にご紹介していきたいです。
週末にはボルダリングジムに通って汗を流しています。
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