ケーブルグランド基本の基本(前編)~カタログから読み解く製品選定のツボ

2022/02/07

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増田 将吾

ケーブルグランドとは、制御盤や中継箱などの筐体や、モータ・センサーに取り付けてケーブルを引き出すための「取付け口」となるパーツです。今回は、このケーブルグランドの基本知識と選定方法を中心に、押さえておきたいポイントについて、カタログを参照しながら学んでいきましょう。


ケーブルグランドは、制御盤や中継箱などの筐体から、ケーブルを引き出すための「取付け口」となるパーツ。粉塵・水からの保護、延焼防止、ノイズ保護などの役割がある。


【目次】
ケーブルグランドの役割と、重視すべき3つの選定項目とは?
 ■法令・規格
 ■用途・使用環境
 ■定格値
ケーブルグランド選定にあたり、押さえたいカタログの読み方とは?
 ■認証規格

 ■IP保護等級
 ■防爆規格(ATEX)
 ■材質
 ■締め付けトルク値


ケーブルグランドの役割と、重視すべき3つの選定項目とは?

ケーブルグランドを取り付ける際は、筐体内部を外部環境から守る必要があります。
そのため、ケーブルグランドには粉塵・水から内部を保護したり、筐体内部で火が出たときに、ケーブルから延焼を防ぐ難燃性の素材が使われています。
またノイズが飛び交う外部環境から保護したり、逆に筐体内部から発生するノイズを外部に出さないようにする際にも役に立つパーツです。

ケーブルグランドを適正に選定するためには、「法令・規格」「用途・使用環境」「定格値」という3つの項目を押さえましょう。

■法令・規格

まず「法令・規格」です。
皆様が開発したり、製造する機械のなかには、海外向けの製品もあるかもしれません。
そのため、輸出する国や地域の法令や規格に適合したものを選定する必要があります。

欧州のCEマークやRoHS、北米のULやCSA規格など、輸出地域の規格に合った製品を選ぶ。できるだけ幅広く規格がカバーされていることがポイント。

日本にはJIS規格があります。欧州にはCEマークやRoHS、北米にはULやCSA規格などがあり、その地域での規格が求められます。海外向けには、できるだけ幅広く規格がカバーされているものを選ぶとよいでしょう。

ケーブルグランドを取り付ける際のネジにも種類があります。
日本ではPFネジ(Gネジ)、欧州(ドイツ)ではPGネジ、北米ではNPTネジ、国際的なISOでは馴染み深いのMネジの規格があります。

■用途・使用環境

次に「用途・使用環境」ですが、使い方や機械の種類によって、さまざまな条件が求められます。

【★写真3】食品機械、工作機械、輸送機械など、ケーブルグランドを組み込むシステムの用途・使用環境などで環境が異なってくるので、条件を洗い出して最適な製品をチョイスする。

たとえば食品機械なら、周囲環境が高温や低温であったり、洗浄する際に酸・アルカリ性の薬品が利用されることもあります。
そのため幅広い温度環境や、耐薬品性に優れたケーブルグランドがオススメです。

工作機械でも、油がかかるようなヘヴィな環境では、耐油性や使用温度の広い製品を選定する必要があります。
そのほか電車や自動車などの輸送機械の場合は、振動・衝撃に強いものが求められます。
走行時にケーブルグランドのネジが緩まないように配慮されていることも選定条件になります。

さらに逃げ場のない鉄道や船舶などで火災が起きた際に有毒ガスが発生してしまうと、人命にかかわるような危険な状態になります。
そこでハロゲンフリー製品も条件の1つになるでしょう。
また爆発しやすい雰囲気で使われる場合には、防爆仕様のケーブルグランドを使う必要があります。そのほかEMCノイズからの保護も重要な要件です。

■定格値

3つ目の「定格値」は、決められた値を超えて使用してはいけない値のことです。
ケーブルグランドの場合は、あまり意識する必要はないのですが、設置条件などによって変化することもあります。
たとえばケーブルが固定されていない場所や可動するような場所では、使用温度などが定格値よりも下がることがあるので念頭に入れておきたいところです。

ケーブルグランド選定にあたり、押さえたいカタログの読み方とは?

ここまでケーブルグランドの基本的な選定要件を紹介しました。それでは具体的にドイツLAPP社の「SKINTOPシリーズ」のカタログを参照しながら、選定時に押さえたいポイントを見ていきましょう。

LAPP社の「SKINTOPシリーズ」で選定時に押さえたい7つのポイント。①認証規格、②IP保護等級、③防爆規格、④材質、⑤ケーブル適合径、⑥取り付けネジサイズ、⑦締め付けトルク値をチェック。

■認証規格

まず輸出国に対して、CEやULなど認証規格が合致しているのか確認します。
ULの場合は「リスティングマーク」(ULの要求事項を満たしている最終製品につけられる認証マーク)と「レコグニッションマーク」(単体では機能しない、あるいはその機能が制限されている部品・材料に対する認証マーク)があります。
部品(ケーブルグランド)自体にレコグニッションが付いていれば、追加試験が要らず、最終審査がスムーズになり、コストメリットもあります。

選定時に押さえたいポイント①認証規格。欧州や米国など、輸出先に合ったものを選ぶ。ULの場合は「リスティングマーク」と「レコグニッションマーク」の違いにも注意。

■IP保護等級

防塵・防水性能を示すIP保護等級については、本コラムで何回か紹介しているので詳細は割愛しますが、「IP68 -5bar」という表記では防塵性能が6、防水性能が8で、いずれもハイグレードになります。
「5bar」は水面下40mぐらいで、1時間浸水しても筐体内部の環境を保てるレベルになります。

選定時に押さえたいポイント②IP保護等級。防塵と防水性能を合せた表記になる。IP68 5barなら、防塵性能6、防水性能8で、「5bar」は水圧(pa)を表す。

このほかIP保護等級と同様の米国規格に「NEMA」(National Electrical Manufactures Association )があり、タイプ1~13のグレードに分類されています。
たとえば、タイプ1はインドアユース、タイプ12はIP67等級ぐらいの性能になります。必ずしも数字が高ければ性能が良いというわけではないので注意しましょう。

■防爆規格(ATEX)

防爆雰囲気で使用する際、制御BOXの中にガスが入らないことを担保する規格として「ATEX」(Atomosphere Explosive)があります。
揮発性媒体の状態(ガス、蒸気、固体)で3つのゾーン(時々~常時)があります。
さらにガスや塵の種類、防爆原理(本質安全など)で、各グレードが決まっています。

選定時に押さえたいポイント③防爆規格「ATEX」は、揮発性媒体の状態(ガス、蒸気、固体)、ガスや塵の種類、防爆原理などで、各グレードが決まる。

■材質

ケーブルグランドの材質については、先ほど触れた難燃性、耐油、耐薬品、高温低温、ハロゲンフリーなどについて、必要に応じてチェックしましょう。特に注意したい点は、構成部品となるシーリング材がゴムなどの場合です。たとえ本体の金属が150℃まで保証されていても、パッキンやOリング側で対応できないこともあります。

選定時に押さえたいポイント④材質は、本体だけでなく、構成パーツの材質にも目を向けたい。シーリング材がゴムなどの場合は耐熱性が保証されないこともある。

実際にケーブルグランドを使用するときは、ケーブルの適合径も大切です。
たとえばM20の場合、カタログ値ではケーブル適合径はφ6mm~13mmとなりますが、できれば中心値9.5mm前後が良いでしょう。

■締め付けトルク値

またケーブルグランド本体を筐体に取り付けるときは、前出のようにMネジ、PGネジ、NPTネジ、PFネジなどの種類があります。
こちらも必要に応じたものを選択してください。このネジを締めつけるトルク値にも注意しましょう。
推奨値で締め付けることで、製品寿命を延ばすことができます。

選定時に押さえたいポイント⑤ケーブル適合径はカタログ値の中央値に近いものにする。ポイント⑥取り付けネジサイズは、ネジ種によって必要なものを選択。ポイント⑦締め付けトルク値は製品寿命に関係するので、トルクレンチで推奨値になるようにする。


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ご希望の方は、弊社インサイドセールス部(insidesales@kmecs-automation.jp)まで、ご連絡いただければ幸いです。

次回は、弊社で取り扱っているケーブルグランド製品の紹介と、具体的な事例について紹介する予定です。お楽しみに!



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増田 将吾プロダクトマネージャー

主にMurrplastikやBinderを担当しています。
ヨーロッパの優れた製品を幅広く皆様にご紹介していきたいです。
週末にはボルダリングジムに通って汗を流しています。

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