【連載13】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所
2018/02/05
- LAPP
まだまだ奥が深いケーブルグランドの世界。LAPPの隠れた工夫に着目!
前回は、LAPP社が提供するケーブルグランドのブランド「SKINTOP」について、その特徴を中心にご紹介しました。ケーブルグランドは、ケーブルを集約し、防水機能などを提供する部品ですが、LAPP社の製品には、ラチェット構造やラメラ構造、シーリング構造など、他社にない工夫がたくさん凝らされていることをご説明させていただきました。
2回目となる今回は、具体的な製品名を挙げながら、SKINTOPシリーズの種類と特徴について、詳しくご紹介させていただきます。たぶん新しい発見があるでしょう。
SKINTOPシリーズにも、さまざまな種類があります。まず材質ですが、樹脂製と金属製のタイプが用意されています。
スタンダードの樹脂製「SKINTOP ST-M」は、材質に耐薬品性や耐環境性に優れたポリアミドを採用。ゆるみのない構造で、防水グレードはIP68のほかIP69Kもあり、ULやVDRなどの国際規格をクリアしています【★写真1】。前出LAPP独自の構造により、ケーブル径の対応範囲が広い点も大きな特徴です。
【★写真1】スタンダードタイプの「SKINTOP ST-M」。材質は樹脂製で、耐薬品性や耐環境性に優れたポリアミドを採用。
また取り付け時に、分厚い筐体の板厚に使用できるロングネジタイプの「SKINTOP MS-M XSL」もあります。バックナット不要でワンクリックで筐体の穴に埋め込める「SKINTOP CLICK」【★写真2】といった便利な製品もそろえています。
【★写真2】「SKINTOP CLICK」ならばバックナットが不要だ。ワンクリックで筐体の穴に埋め込めて、取れない構造だ。背後から手が届かない場所に最適。
一方、金属製は樹脂製よりも遥かに耐環境性に優れ、各種油や薬品、洗剤などにも対応でき、衛生管理が求められる食品や飲料加工プロセスで利用できます。金属製にもニッケル・メッキ処理したものとステンレス製があります。ニッケル・メッキの代表的な製品には「SKINTOP MS-M」【★写真3】が挙げられます。
【★写真3】ニッケル・メッキ製品として代表的な「SKINTOP MS-M」。価格はステンレス性よりも安いが、機能は同等。ただし継時的な変化はある。
また高温範囲が広く(-40℃~+200℃)、蒸気が発生する場所でも使える「SKINDICHT CN-M」【★写真4】もあります。こちらは、ニッケルクロム鋼で、デュポン社のバイトン製シールを採用しているため、酸に対する耐性も有しています。逆に低温対応(-70℃~+100℃)の「SKINTOP COLD」【★写真5】といった製品も用意しています。
【★写真4】200℃までの高温に対応できる「SKINDICHT CN-M」。蒸気が発生する場所でも使える。酸に対する耐性も有する。
【★写真5】-70℃の低温でも利用できる「SKINTOP COLD」。寒冷地や冷凍倉庫などでも利用できる特殊仕様だ。
一方、ステンレス製には「SKINTOP INOX」【★写真6】と「SKINTOP HYGENIC」【★写真7】の2種類があります。 INOXはステンレス製の一般的な製品です。HYGENICは、ヨーロッパの衛生規格管理協会である「EHEDG」に対応しの認証を受けています。この団体は、食品製造装置に対して厳しい衛生管理基準を設けており、菌の繁殖やゴミの付着などを防ぐために、材質やゴミが入り込まない形状などを指導しています。
【★写真6】ステンレス製の一般的なケーブルグランド「SKINTOP INOX」。樹脂製よりも遥かに耐環境性に優れ、各種油や薬品、洗剤などにも対応。
【★写真7】ステンレス製の「SKINTOP HYGENIC」。ヨーロッパの衛生規格「EHEDG」に対応。菌の繁殖やゴミの付着などを防ぎ、材質やゴミが入り込まない形状。
【★写真8】は、HYGENICとINOX、MS-Mを比べたものです。HYGENICとINOXには、形状に突起がなく、ねじ山も出てきませんが、MS-Mは突起があります。HYGENICとINOXは、ステンレスなので耐腐食性が高いのですが、特にHYGENICのほうは、ケーブルをまわし込んだとき、キャップ側の上面とケーブルに隙間がなく、ゴミが溜まらない、もしくは入り込まない構造になっています。
【★写真8】HYGENICとINOX、MS-Mを比べてみた。HYGENICとINOXは形状が丸くなっており、エッジがなく、ゴミが溜まりにくい。またHYGENICとINOXでは、HYGENICのほうが隙間がないことがわかる。
このほか、LAPPのケーブルグランドには、EMCのノイズ対策に必要なシールド線をグランド側に落とせるタイプなども用意しています。これはインナー側でGNDに導通する仕組みですが、通常の樹脂製のケーブルグランドでもシールドは可能です。
この場合はアドオンのバックナットをブラシ付きのものに変更します。バックナットには爪が付いており、制御板の塗装面を破って、鉄の部分に接触させるようにして導通することが可能です。こういった製品は、他社にはあまり見られないもので、LAPPのケーブルグランドの特徴のひとつといえるでしょう。
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