制御盤レスを実現する次世代オートメーション「ゼロキャビネット・コンセプト」

2025/11/14

  • Murrelektronik

ニランカ・ゾイサ

高まるオートメーションの課題

産業オートメーションの現場では、デジタル化やクラウドコンピューティングの普及、AI・機械学習の導入、デジタルツインの活用、エネルギー効率の最適化、そして作業者の健康に配慮した職場環境づくりなど、複数の課題が同時に進行しています(図1)。 

こうした状況の中で、ドイツのMurrelektronik社(ムルエレクトロニク)が提唱する「ゼロキャビネット・コンセプト」は、これらの課題を一挙に解決する革新的なソリューションとして注目を集めています。

「ゼロキャビネット」とは

ゼロキャビネット・コンセプトは、「盤をなくすことで、工場をもっと自由にする」という思想から生まれた、次世代のオートメーションアーキテクチャです。
制御盤(キャビネット)を廃止し、制御機能を現場(フィールド)に分散配置することで、柔軟で効率的なシステム構築を可能にします(図2)。

この構想の中核を担うのが、Murrelektronik社の分散型制御システム「Vario-X」です。

Vario-X 

「Vario-X(バリオエックス)」は、モジュールを組み合わせることで、電源供給、保護ヒューズ、分電機能、モータやアクチュエータの制御、安全機能、フィールドデバイスの接続など、これまで[制御盤内で行っていたすべてのタスクと機能]を現場レベルで完結させることができます。

さらに、Vario-Xは機械単体の自動化(スタンドアローンソリューション)としてだけでなく、複数のVario-Xを連携させることで、アプリケーションに最適化された分散型自動化システムを柔軟に構築することも可能です。

 

Vario-Xステーション

(1)上位中央制御システム
(2)IPC,パワーサプライ,I/Oユニット,STO
(3)パワーサプライ
(4)IPC,安全PLC&I/Oユニット,パワーサプライ,I/Oユニット,STO
(5)I/Oユニット
(6)IPC,パワーサプライ,I/Oユニット

IPC、I/O、モーション、ビジョン、安全モジュールなどの各種機能モジュールを自由に選択し、特定アプリケーションに適した構成が可能です。
これにより、全ての機械機能をシステムに完全に統合できます。
IPC、I/O、モーション、ビジョン、安全モジュールなど、さまざまな機能モジュールを自由に組み合わせることで、アプリケーションに最適化されたシステム構成を実現できます。
これにより、機械のあらゆる機能をシステム全体にシームレスに統合することが可能です。

IPCはCODESYSベースのソフトPLCとして動作し、上位制御やEdgeゲートウェイとしても活用可能です。
ローカルでデータを処理・最適化したうえでクラウドに送信するため、
応答性の高い信頼性のあるシステム運用を実現します。



 

Vario-Xがもたらす未来

【生産ラインを効率化する】

  ライブデータと内蔵センサ

Vario-Xに搭載された内蔵センサは、位置情報や動作状態を常時監視し、ワーク品質に関するデータをリアルタイムで取得します。
これにより、ラインの状態を「見える化」し、より安定した品質管理を実現します。

予知保全

内蔵センサから得られるデータを活用し、メンテナンスの計画を事前に立案できます。
突発的なトラブルを防止し、安定稼働を維持。
計画的な保全により、稼働率の向上とダウンタイムの最小化を実現します。

パラメータ設定による簡単操作

複雑で時間のかかるプログラミングは不要です。

直感的なインターフェースにより、各システムコンポーネントの設定を簡単に行うことができます。
専門的な知識がなくても、誰でもすばやく確実に操作できる設計です。

多品種生産への対応

内蔵センサが異なるワークを自動認識。
段取り替えの必要がなく、複数の製品モデルを同じラインで効率的に生産できます。
これにより、生産性を大幅に向上させ、柔軟な生産体制を実現します。

【デジタルツインとバーチャルコミッショニング】

Vario-Xはデジタルツイン技術を活用し、システム導入前に動作シミュレーションを実施できます。
これにより、潜在的な問題を事前に特定し、立ち上げ時間を大幅に短縮します。

また、工程最適化・状態監視・機械学習機能を組み合わせることで、トラブル発生を未然に防止。
経験の浅いオペレーターでも短時間で立ち上げが行えるため、人材不足対策にも有効です。

 

【スケーラブルで柔軟な拡張性】

Vario-Xは、モジュールをブロックのように組み合わせて構成できるシステムです。

ドライブやアクチュエータが追加された場合も、自動ティーチング機能によって設定を即座に更新。
デイジーチェーン配線や分岐コネクタにより、スムーズかつ柔軟なシステム拡張が可能です。

【迅速な立ち上げ】

モジュール式設計と簡単なコネクタ接続により、納入先工場での運搬・設置・立ち上げ時間を大幅に短縮。
熟練度を問わず誰でも簡単に作業が行え、万が一のトラブルも診断機能で迅速に解決できます。

【簡単なシステム設計】

システムをよりコンパクトに設計でき、生産設備や追加ワークステーションのスペースを確保可能。
Vario-Xはセンサやケーブルの削減とプラグ&プレイ接続によって、装置・機器の接続やシステム立ち上げを「より速く・簡単に・柔軟に」実現します。

【快適な作業環境】

Vario-Xシステムと電動クランプを組み合わせることで、騒音レベルを大幅に低減。

不快な作業音を抑え、有害粒子の発生も減少します。
これにより、クリーンで快適な作業環境を実現します

【エネルギー消費の削減】

従来の空気式クランプは、電動式と比べて平均で約7倍のエネルギーを消費します。
また、検出が難しいエア漏れにより、圧縮空気が無駄になるケースも少なくありません。

Vario-Xでは空圧システムを電動化することで、これらの損失を解消し、最大95%のエネルギー削減を実現します。

 

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