【連載12】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所
2017/12/04
- LAPP
こんな機能もあった! 実は奥が深いケーブルグランドの世界
今回から2回にわたり、LAPP社が提供するケーブルグランドについて、数回にわたり紹介したいと思います。ケーブルグランドは、制御盤、インバータ、分岐ボックスなどのケーブルエントリ部に使う製品です。たとえば、制御盤の穴に取りつけて、背後からバックナットを締め付けて固定することで、ケーブルを集約し、防水性などの機能を提供することができます。
これを聞くと、シンプルな構造に見えますが、実はLAPP社のケーブルグランドは他社にない、さまざまな工夫が凝らされおり、奥が深い製品なのです。今回は、同社のブランドである「SKINTOPシリーズ」を中心に、その構造や特徴についてご説明していきましょう。
では、SKINTOPシリーズのなかでも代表的なST-M【★写真1】の構造を見てみましょう。SKINTOPシリーズは、取り付けも非常に簡単で、ケーブルを挿入し、手回し、あるいはスパナでキャップが固くなるまで回せば作業は完了します。わずか1回転でケーブルの固定から、センタリング、IP68の防水性まで実現できるという大きな特徴があります。
【★写真1】SKINTOP ST-Mは、耐薬品性、耐環境性に優れたポリアミドを使用。ケーブルの固定が容易なクイック・インストール構造など、優れた特徴がある。
これらの機能は、優れた構成パーツを最適に組み合わせることで実現しています。【★写真2】のように、キャップ部、シール部と、ナット部の「ラメラ構造」「複条台形ネジ」「シーリング」が大きな特徴です。
【★写真2】SKINTOPシリーズ ST-Mの構造。キャップ部、シール部とナット部において、優れた構成パーツを最適に組み合わせている。
まずキャップ部ですが、内側に特殊な突起(ラチェット構造)を持っており、振動する場所でも、緩まない構造になっています。実際に手やスパナで締め付けるごとに、「カチッ、カチッ」という音がするので、着実に固定されることを確認できると思います。
もうひとつは、ラメラ構造と呼ばれるものです。これはナット部の先にスラスト方向に層状の溝を付けたもので、ネジを締めるとケーブルが中心部に向かってセンタリングされ、しっかり固定されるように力が働き、高い防水性を発揮します。また逆に、確実なストレインリリーフ効果もあります。
このラメラ構造により、対応ケーブル径のカバーリング範囲が広くなるというメリットがあります。そのためSKINTOPは、品種が少なくても、幅広い範囲で多くのケーブル径に対応できるわけです。たとえばSKINTOP(M20)では、7mm~13mmまでのケーブル径に対応できます。
またシールやシーリングに関しても、ひと工夫があります。防水シールはクロロプレン製で、保護等級はIP68あるいはIP69Kを実現します。一方、制御盤などのパネル接合面のシーリングについては、一般的なケーブルグランドの場合にはパッキンを使う必要がありますが、SKINTOPでは基本的に不要です。というのも、接合面にリング状の凹凸が成型されており、これがシール機能を発揮するからです【★写真3】。
【★写真3】SKINTOPでは、パネル接合面のシーリングにパッキンを使う必要がない。写真のようにリング状の凹凸が成型され、シール機能を発揮する。
キャップのネジ部は、複条台形ネジになっていますが、これは優れた強度とスピーディな締め付け力を発揮するものです。また制御盤側から取り付けるバックナットのネジ部は、インチ対応のPGネジもサポートしています。ヨーロッパでは、すでに2000年からPGネジが、メトリックネジ(Mネジ)に置き換えられていますが、Mネジに移行するなかで、日本仕様として、お客様にPGネジも供給しているのです【★写真4】。
【★写真4】バックナットのネジ部のサイズとケーブル径の関係。ヨーロッパではPGネジがMネジに置き換えられているが、国内向けにPGネジもサポート。
規格に関しても、SKINTOPは世界各国における多くの規格を取得しているため安心です。CE、UL、VDE、RoHSなど主要規格に対応しておりますので、輸出製品に適しています。
ケーブルグランドには、さまざまな種類があります。材質としてポリアミド製やステンレス製のものや、ノイズ対策を施したもの、またバックナットが不要のタイプもあります。これは制御盤の穴にそのまま差し込むだけで固定されるため、制御盤の狭いスペースで、後ろから手が届かないような場所に使えるため、非常に重宝します。
次回は、これらSKINTOPシリーズの種類について、具体的な製品名を挙げながら、詳しくご紹介させていただきたいと思います。
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