【ROPEX連載 第3回】インパルスシールの温度はどう測る?電流・電圧・抵抗変化からシールバンド温度を制御する仕組み
2026/07/24
- ROPEX
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近野 啓斗
包装機械の設計や生産技術、品質管理に携わる皆様にとって、ヒートシールの「設定温度」と、実際の加熱工程で再現される温度挙動の違いは、シール品質を考えるうえで重要な論点です。
前回の記事:ROPEX連載 第2回では、ROPEXの製品体系と、RESISTRON(レジストロン)とCIRUS(サイラス)の使い分けについて解説しました。
今回は、ROPEXシステムの中核となる温度コントローラが、ヒートシールバンドの温度をどのように捉えているのかを解説します。
ROPEXの温度コントローラは、一般的な熱電対や測温抵抗体をヒートシールバンドへ直接取り付ける方式ではありません。バンドに流れる電流と、バンドにかかる電圧を測定し、温度によって変化する抵抗値をもとに、ヒートシールバンドの温度を算出・制御します。
温度コントローラの原理と、導入検討に必要な基本的な考え方を解説します。個別装置におけるTCR設定値、校正条件、トランス・配線設計、異常波形の詳細判定などは、使用機種や装置条件によって異なるため、本記事では扱いません。
システムの基本構成イメージ
①対向部品(シリコンプロファイル付き), ②反対側のヒートシールツール, ③シーリングバー, ④変流器, ⑤温度コントローラ, ⑥インパルストランス, ⑦ラインフィルター
1. 設定温度とシールバンド温度は同じとは限らない
PLCや温度コントローラに180℃と入力しても、すべてのシールサイクルでヒートシールバンドが同じように180℃へ到達するとは限りません。
実際の温度挙動は、ヒートシールバンドの材質・寸法、インパルストランス、配線、電源、シールバーの熱容量、フィルムに奪われる熱量、冷却条件、連続運転による蓄熱など、複数の条件から影響を受けます。
同じ設定温度でも、設定値への到達時間、加熱中の安定性、冷却へ移るタイミングが異なれば、シール強度や外観に差が生じる可能性があります。
そのため、ヒートシール工程では「設定値が何℃か」だけでなく、シール動作中に温度がどのように立ち上がり、設定値付近でどのように推移したかを確認することが重要です。
2. 温度コントローラが測定するもの
温度コントローラが継続的に測定する主な情報は、ヒートシールバンドに流れる電流Iと、ヒートシールバンドにかかる電圧Vです。
電圧と電流が分かれば、オームの法則から抵抗値Rを求めることができます。
温度コントローラは、この抵抗値が基準状態からどのように変化したかを確認し、ヒートシールバンドの温度へ換算します。そして、設定温度との差に応じて出力を調整します。
電流・電圧の測定から温度制御までの概念図
(※画像はイメージとなります。)
3. 抵抗変化から温度を求める仕組み
金属は、温度が変化すると電気抵抗も変化します。温度変化に対して抵抗値がどの程度変化するかを示す考え方が、TCR(Temperature Coefficient of Resistance:抵抗温度係数)です。
TCR(抵抗温度係数)とは
TCR(Temperature Coefficient of Resistance:抵抗温度係数)とは、導体の温度が1℃変化したときに、電気抵抗がどの程度変化するかを示す値です。一般的には「ppm/K」または「%/K」で表されます。
ヒートシールバンドを加熱すると、バンド温度の変化に伴って抵抗値も変化します。温度コントローラは、その変化を利用してヒートシールバンドの温度を算出します。
ただし、バンド材質によってTCR特性は異なります。正確な温度制御には、使用するヒートシールバンドとコントローラの設定が適合していることが前提です。
4. 「センサレス温度制御」の意味
ROPEXの温度制御は、「センサレス温度制御」と説明されることがあります。
ここでいうセンサレスとは、温度を測定せずに推測で制御するという意味ではありません。熱電対や測温抵抗体をヒートシールバンドへ直接取り付ける代わりに、電流・電圧・抵抗変化という電気的な測定値から、バンド温度を算出する方式です。
| 比較項目 | 外付け温度センサ方式 | ROPEX 方式 |
|---|---|---|
| 主な測定対象 | センサ取付位置の温度 | ヒートシールバンドの抵抗変化 |
| 温度情報の取得 | 熱伝導を介してセンサが検出 | 電流・電圧を電気的に測定 |
| 重要な条件 | センサ種類・取付位置・固定方法 | バンド材質・TCR・校正・システム構成 |
| フィルム界面温度 | 通常は直接測定ではない | 直接測定ではない |
外付け温度センサ方式とセンサレス方式の違い
(※画像はイメージとなります。実際の配線とは異なる部分がございます。)
5. TCRとAUTOCALが重要な理由
TCR:バンド材質の特性を温度換算へ反映する
同じ温度変化でも、抵抗値の変化量はヒートシールバンドの材質によって異なります。そのため、使用するバンド材質に適合した設定が必要です。
初期配線、セッティング時には温度コントローラに適用するシーリングバンドの材質で定められるTCR値[ppm/℃]を入力し教え込む必要があります。
AUTOCAL:温度算出の基準を整える
AUTOCALは、ヒートシールバンドの基準状態をコントローラへ認識させるための校正機能です。正確な温度制御には、使用機種とシステム構成に応じた適切な設定・校正が必要です。
具体的なTCR設定値、AUTOCALの実施条件、バンド交換後の作業手順は、機種・ファームウェア・システム構成によって異なります。対象機種の取扱説明書に従うか、弊社へお問い合わせください。
6. 毎秒50回/60回の測定と温度監視
ROPEX温度コントローラは、ヒートシールバンドの電流と電圧を継続的に測定します。測定サイクルは電源周波数に対応し、50Hzでは毎秒50回、60Hzでは毎秒60回実行されます。
インパルスシールでは、加熱時間が1秒未満から数秒程度になる場合があります。その短い工程の中で、温度の立ち上がり、設定温度への到達、温度逸脱などを捉え、設定温度へ追従するように出力を制御します。
対応する機種とROPEXvisual(PCで実際のシーリング温度を確認できる専用ソフト)を組み合わせることで、設定値・構成データの表示、目標温度と算出温度のリアルタイム表示、データ保存、イベントログの読み出しなどに活用できます。
設定温度と温度許容帯を監視するイメージ
(イメージ画像となります。実際の挙動とは異なる場合があります。)
ROPEXコントローラとROPEXvisualをこちらの動画から確認できます!
7. 温度挙動から確認できること
シール不良が発生した場合、設定温度だけでは原因を判断できません。温度が設定値へ到達しているか、安定しているか、サイクルごとに再現されているかを確認することで、調査すべき領域を整理しやすくなります。
| 温度挙動 | 確認が必要な領域 |
|---|---|
| 設定温度に到達しない | 電源、負荷、配線、ヒートシールバンド、システム構成 |
| 温度が安定しない | バンド状態、接続状態、設定・校正、機械条件 |
| サイクルごとにばらつく | 加圧、材料位置、冷却、蓄熱、タイミング |
8. コントローラ単体ではなくシステムで考える
ROPEXの温度制御性能は、温度コントローラだけで決まるものではありません。
ROPEXシステムは、温度コントローラ、インパルストランス、電流測定部、ヒートシールバンド、シールバー、受け側、絶縁材、冷却機構、制御信号などを組み合わせるシーリングシステムです。
シール長、シール幅、フィルム構成、目標温度、加熱時間、冷却時間、必要タクト、片側・両側加熱、通信方式などに応じて、各構成品を選定する必要があります。
- 包材の材質構成・厚み
- シール長・シール幅・シール形状
- 目標温度・加熱時間・冷却時間
- 現在および目標サイクルタイム
- 電源・PLC・通信方式
- シールバー・加圧・冷却構造
製品単体の比較だけでなく、実際のフィルムと装置条件に合わせてシステムを検討することが、安定したシール品質への近道です。
9. よくある質問
Q1. ヒートシールバンドに熱電対を取り付ける必要がありますか?
ROPEX温度コントローラによるバンド温度制御のために、熱電対をヒートシールバンドへ直接取り付ける必要はありません。電流・電圧と抵抗変化から、ヒートシールバンド温度を算出します。
Q2. フィルムの溶着界面温度を直接測定していますか?
直接測定しているのはフィルム界面温度ではありません。ヒートシールバンドの抵抗変化を測定し、バンド温度へ換算しています。フィルムへの熱の伝わり方は、包材構成、圧力、時間、シールバー構造などの影響を受けます。
Q3. バンド交換後の設定方法は同じですか?
機種、バンド材質、システム構成によって確認事項が異なります。TCR設定やAUTOCALを含め、対象機種の取扱説明書に従ってください。
Q4. 既存包装機への組み込みは可能ですか?
既存設備への組み込みも検討できます。ただし、既存ヒーターへコントローラだけを追加できるとは限りません。バンド、トランス、測定回路、配線、シールバー、電源、PLCなどを含めた適合性確認が必要です。
まとめ:センサレスとは、電気的な測定に基づく温度制御
- ROPEX温度コントローラは、ヒートシールバンドの電流と電圧を測定する
- 抵抗値の変化とバンド材質の特性から、ヒートシールバンド温度を算出する
- 熱電対をバンドへ直接取り付けずに、設定温度へ追従するよう出力を制御する
- 算出対象はバンド温度であり、フィルム界面温度の直接測定ではない
- 性能はコントローラ単体ではなく、トランス、バンド、配線、ツール、冷却を含むシステム全体で決まる
「設定温度は同じなのにシール品質が安定しない」「フィルム変更後の条件出しに時間がかかる」「既存設備の温度管理を見直したい」といった課題がある場合には、設定値だけでなく、シールバンド温度の挙動とシステム構成を確認することが重要です。
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シーリングテストの様子▲
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「Ropex社の温度制御の仕組み」
次回予告
次回は、機械設計担当者様向け、シールツールの複雑形状へのカスタマイズに関する記事をご紹介。ROPEXなら、一般的な直線形状だけでなく、スパウト・円形・3D立体形状等あらゆる形状にあったシーリングツールの設計が可能です。
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近野 啓斗プロダクトマネージャー
ROPEX社インパルスシーリングシステムのプロダクトマネージャー。
包装シーリングに関するご相談に即座に応えられるよう日々勉強しています。
ランニングにはまっており、目標はフルマラソン完走。
長い目標ですが、地道にコツコツ日々の練習を頑張っています。
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