電源分配もIP67時代へ
2026/06/26
- Murrelektronik
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ニランカ・ゾイサ/Nilanka De Zoysa
リモートI/OやIO-Linkの普及により、信号配線や制御機能の分散化も進んでいます。
しかし、制御盤内には依然として多くの電源分配機器や回路保護機器が残されており、分散化のメリットを十分に活かしきれていないケースも見られます。
本記事では、電源分配と回路保護をIP67対応機器によって盤外化するという新しい設計手法について解説します。
制御盤のさらなる小型化や配線工数の削減、メンテナンス性向上を実現するためのポイントをご紹介します。
なぜ今、制御盤の小型化が求められるのか
近年、機械・装置メーカーでは制御盤の小型化や省スペース化への要求がますます高まっています。
製造現場では設置スペースの制約が厳しくなっているほか、装置のモジュール化や海外向け大型設備の分割搬送なども増えており、設計段階からコンパクトな装置構成が求められています。
こうした背景から、リモートI/OやIO-Link、分散型安全回路などを活用し、従来制御盤内に集約されていた機能を装置側へ分散配置する設計が普及しています。信号配線の削減や施工工数の低減、メンテナンス性の向上など、多くのメリットが得られるためです。
しかし、その一方で見落とされがちな領域があります。
それが「電源分配」と「回路保護」です。
信号系統の盤外化は進んでいるものの、DC24V電源の分配やサーキットプロテクタなどの保護機器は依然として制御盤内に残されているケースが少なくありません。
結果として、制御盤小型化や配線工数削減といった分散化設計のメリットを十分に活かしきれていない場合があります。
制御盤小型化の壁となる「電源分配」
従来、DC24V電源や端子台、ヒューズ、サーキットプロテクタを制御盤内に集約する設計は、信頼性が高く標準的な設計手法として長年採用されてきました。
しかし、装置の大型化やモジュール化が進んだ現在では、この盤内集中型の電源設計が新たな課題を生み出しています。
リモートI/OやIO-Linkによって信号配線を削減できたとしても、電源分配や回路保護が制御盤内に残っている場合、盤から現場機器まで多数の電源ケーブルを配線しなければなりません。
その結果、以下のような課題が発生します。
制御盤スペースを圧迫する
プロテクタや配線ダクトにスペースが占有され、制御盤が大型化につながります。
その結果、現場の設置スペースを圧迫します。
長尺ケーブルによる電圧降下・誤作動
制御盤から現場デバイスまでの物理的距離が長くなり、電圧降下やノイズによる機器の誤動作リスクが高まります。
制御盤内設置による目視不可
LEDなどの診断表示が制御盤内にあるため、異常発生時に扉を開けないとステータスを確認することができません。
I/Oカード増設による通信の複雑化
診断情報をPLCに取り込む際、盤内への信号線配線やI/Oカードの増設が必要になり、システムが複雑化します。
復旧の手間・工数
トリップ時のリセットやメンテナンスのたびに、安全確保(安全規定の遵守)の手順を踏んで盤の扉を開閉する必要があり、復旧に時間がかかります。
海外出荷・分割搬送時の際組立工数の肥大化
大型装置を分割して出荷し現地で再組立する際、制御盤から各ユニットへ多数の電源線を個別配線していると、現地での再接続・誤配線チェックに膨大な時間を要します。
解決策は「電源分配のIP67化」
これらの課題を解決するのが、電源分配と回路保護を制御盤の外(装置側・ユニット側・負荷の直近)へ移す「盤外電源ソリューション」です。
単に部品を外に出すだけでなく、装置全体をユニット単位で再設計し、信号・通信・電源・保護を現地で最適化する考えです。
盤外化による主なメリット
- 制御盤内の端子台や配線量を劇的に削減、盤内スペースを有効活用
- 負荷の直近で電源を分配するため、配線距離を短縮し電圧降下を抑制
- M12コネクタ化により、配線作業を標準化・ポカヨケ化
- ユニット単位での接続・取り外し(分割搬送)が容易
- 異常箇所(トリップ)を現場のLEDで即座に目視確認可能
- 盤外I/OやIO-Linkマスタと同じ設計思想でシステムをスマートに統合
このように、電源分配のIP67化は単なる部品の置き換えではなく、装置全体の設計思想をより分散化・モジュール化へ進化させるアプローチと言えます。
Murrelektronik社が提案するIP67電源分配ソリューション
電源分配と回路保護の盤外化を実現するソリューションとして、Murrelektronik社はIP67対応の電子式サーキットプロテクタおよび電源分配機器を展開しています。
従来は制御盤内で行っていた電源分配や回路保護を現場側へ移設することで、制御盤の小型化や配線工数削減、メンテナンス性向上を実現します。
中核となる製品は、パワーディストリビュータ「PD67」と、IP67電子式サーキットプロテクタ「Mico67」の2製品です。
パワーディストリビュータ「PD67」
PD67は、制御盤から供給されたメイン電源を、現場側で複数の機器やユニットへ効率よく分岐・分配するための盤外モジュールです。
負荷機器の近くに設置することで、長距離配線を削減し、電圧降下の抑制や施工工数の削減に貢献します。また、ユニット単位で電源を分配できるため、モジュール化設計や分割搬送を伴う大型設備にも適しています。
IP67電子式サーキットプロテクタ「Mico67」
Mico67は、PD67の二次側に配置し、センサー、アクチュエータ、リモートI/Oなどの負荷回路を過電流から確実に保護する電子式サーキットプロテクタです。
従来のヒューズや機械式プロテクタとは異なり、高精度な電子式保護機能を備えており、負荷ごとの確実な回路保護を実現します。
さらに、診断情報の取得やリモートリセットにも対応しており、異常発生時の復旧作業を効率化できます。
製品ラインナップ

PD67とMico67によるシステム構成
従来は制御盤内で行っていた電源分配と回路保護を、現場側で多段的かつ柔軟に構成できるのが本ソリューションの特徴です。
PD67は電源を分配する役割を担い、Mico67は各負荷回路を保護する役割を担います。
制御盤から供給された幹線電源をPD67で分配し、その先に設置したMico67で各負荷回路を保護することで、盤外での電源管理を実現します。
【制御盤内電源】
↓
PD67(電源分配)
↓
Mico67(回路保護)
↓
センサー・アクチュエータ・I/O機器
という構成となり、電源分配と回路保護を負荷の近くで行うことができます。
従来設計(IP20)と次世代設計(IP67盤外化)の比較
では、次世代の設計と従来の設計ではどのような変化があるでしょうか。
| 評価項目 | 従来の盤内集中設計(IP20) | 次世代の盤外分散設計(IP67化) |
| 制御盤のサイズ | 電源・保護機器・端子台で占有され大型化 | 大幅に小型化・スリム化が可能 |
| 現場の配線工数 | 制御盤から書く不可への個別・長尺配線(ネジ締め多数) | M12コネクタによるワンタッチ接続、配線の短縮 |
| 電圧降下のリスク | 距離が長いため発生しやすい | 負荷の近くで分配するため極めて低い |
| メンテナンス性 | 異常時に制御盤を開けて確認・リセットが必要 | 現場のLEDで異常個所を即座に特定・リセット可能 |
| 分割搬送時の対応 | 現地での大量の再配線・ご配線リスク有 | コネクタを外して分割、現地で挿すだけで復旧 |
活用事例
ACT・工具交換ユニット
ATC(自動工具交換装置)や工具交換ユニットは、センサー、アクチュエータ、モーター、バルブが高密度に集中します。
これらをすべて制御盤から個別配線すると配線が輻輳しますが、ユニット近くにPD67/Mico67を設置することで、電源・保護系統をユニット単位でスマートに整理することができます。
ワーク搬送・ローダー・アンローダー部
工作機械に付帯する搬送装置やローダー・アンローダーは、盤から離れた位置にデバイスが配置されるため、電圧降下や施工負担が重くなります。
盤外電源分配を活用すれば、負荷の直近で効率よく電源をまとめ、必要な箇所だけをピンポイントで回路保護できます。
海外出荷機・分割搬送機
出荷時に装置を分割して輸送し、現地で再組立を行う大型装置に最適です。
PD67とMico67を用いてユニットごとに電源・保護を完結させておけば、現地では幹線とコネクタを結合するだけで作業が完了し、立ち上げ工数を激減させることができます。
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ニランカ・ゾイサ/Nilanka De Zoysa
Murrelektronik社のプロダクトマネージャーを担当。
リモートIO、IO-Link、省配線などのご案件でお客様と日々やり取りをしています。
スリランカ出身ですが、日本在住歴は長く、日本語検定のN1を取得しています。
弊社の社員よりも日本語が堪能だと言われることもあります。
Murrelektronik社に関することは何でもお聞きください。
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