機械式サーキットプロテクタから電子式サーキットプロテクタに変えるべき理由とは?(前編)

2023/03/13

  • Murrelektronik
  • セミナーサポート

ニランカ・ゾイサ

これまで機械式のサーキットプロテクタ(以下、CP)に慣れ親しんできた読者の皆さんも多いでしょう。
ここでいう機械式CPには「電磁式」「サーマル式」などがありますが、いくつかの課題点があります。
そこで、このコラムでは、これらの弱点を洗い出し、それらを解決する電子式CPについて解説したいと思います。


【目次】
機械式CPの課題とは?
短絡時にCPが反応しないのはなぜ? その原因と対策とは?
突入電流でCPがトリップして誤動作することを防ぐためには?
短絡時にメカ式CPより先に電源の保護回路が作動してシステムが全停


機械式CPの課題とは?

まず機械式CPの課題について列挙しましょう。大きく5つの問題点があります。

たとえば、

①短絡時にCPが反応せず、電線が発火
②突入電流でCPがトリップして誤動作する
③CPより先に電源保護回路が作動する
④回路によるCPの使い分けが必要
⑤北米規格のNEC Class2回路への対応が面倒

といったものです。では、それぞれについて、前編と後編に分けて、原因と解決策を探っていきましょう。

短絡時にCPが反応しないのはなぜ? その原因と対策とは?

まず①ですが、短絡時にCPが反応しない理由には、単体故障、CPの選定ミス、消費電力の計算ミス、短絡に生じた過電流がCPで瞬時に遮断するのに不十分という4つが考えられます。
このうち最も可能性があるのは「CPで遮断する過電流が不十分」というものです。
これは「短絡電流が流れるループ回路の抵抗値が大きいこと」が原因です。具体的に次のような構成を想定してみます。

課題①電線で短絡発生時にCPが反応せず、過電流で電線が発火する。この場合の具体的な構成。
計算では過電流が12A流れるが、CPが動作しないケースがある。

このとき、盤内配線のシングルコア(単芯)、多芯ケーブル、センサケーブルの各抵抗値の合計は約1Ωで、位相も加味し、抵抗やリアクタンスを合成したループインピーダンスは2.06Ωになります。
するとDC24V系統のCPを使っている場合、短絡時に流れる最大電流はオームの法則から、24V÷2.06Ω=11.7Aと計算できます。

では、約12Aもの電流が流れるのに、なぜCPは反応しないのでしょうか? 
機械式CPの動作特性図(下図参照)を見ると、定格電流が4Aなので、約290%の過電流となります。
そのため動作特性によるとCPが動作するまでに2秒~10秒かかってしまいます。
つまり、その間に細いセンサケーブルに電流が流れすぎて熱が発生し、最悪の場合は発火してしまうわけです。

中速形の定格電流4Aの機械式(磁気式)サーキットプロテクタの場合の動作特性図。
これを見ると、CPが動作するまでに2秒~10秒かかり、その間に過電流が流れて発火する恐れがある。

 

では、この現象を解決するにはどうしたらよいでしょうか? たとえば弊社で取り扱っている電子式CPに取り換えてみます。この電子式CPは前出の機械式CPと同じ定格電流4Aですが、動作特性図から遮断までの時間は20~30msなので、ケーブルには僅かの時間しか過電流が流れません。ケーブルの抵抗は長さで変わってきますが、電子式CPであれば迅速にトリップするので安心です。

同じ定格電流の電子式CPを使う場合は、図のように遮断時間は20~30msと高速で動作するため、過電流がほとんど流れず、発火の恐れがないことが分かる。

 

突入電流でCPがトリップして誤動作することを防ぐためには?

2番目の課題は、起動時などに突入電流が発生し、CPが誤動作する現象です。
これを理解するには、サーキットプロテクタの動作原理を知る必要があります。
機械式CPには過電流時にトリップする仕組みとして、電磁石あるいはバイメタルがあり、機械的に接点をオフにします。

機械式CPの動作原理。過電流が流れると、電磁石やバイメタルで機械的に接点をオフにするが、周囲温度や機械の起動順番などにも依存。
CPの動作時間も製品ごとに異なる。

 

ところが、これらは周囲環境(特に温度)や、機械の起動順番、機械の稼働状況に依存します。さらにCPの動作時間も製品ごとに幅があります。
したがって、たとえデータシートを参考にして製品を選定しても、機械式CPの場合は誤検知して、正常に起動しないことがあるのです。

そこで、あらかじめ突入電流を想定しておき、中速型・低速型など、反応速度がある程度遅いCPを選択することも解決策となります。
ただ結果的に①と同じように瞬断されず発火する課題を抱える可能性も十分にあります。
そこで、やはり電子式CPを採用することを弊社では推奨しています。

電子式CPは、MOSFETとマイコンで高速にスイッチングし、周囲温度にも影響しないため安心だ。
突入電流の誤検知をしない設計で確実に短絡時の回路を遮断する。

 

電子式CPでは、高速なスイッチングが可能なデバイスとして、MOSFETとマイコンが使われています。
サーマル部材やヒューズを使用しないため、周辺環境にも依存しません。また突入電流での誤検知をしない設計で、過電流と突入電流を区別できるため安心です。

短絡時にメカ式CPより先に電源の保護回路が作動してシステムが全停

3番目の課題は、短絡時にメカ式CPより先に電源の保護回路が作動してしまい、その結果として24V系統が全停止し、故障個所の特定が困難になることです。
では、電源の保護回路が作動する場合とは、どんなケースが考えられるのでしょう? 
これには①短絡が原因になる場合と、②24V系統が同時にONになり大きな突入電流が流れる場合があります。

たとえば①の場合を考えてみましょう。短絡時に11.7Aの電流が流れたと仮定します。
もし中速形(M)の磁気式CP(定格電流4A)を採用していた場合には、前出のように11.7A÷4A=2.9A=290%の過電流になり、特性表からCPが作動するまでに約2~10秒かかることになります。
するとCPの作動前に、主電源の短絡保護機能が動作、あるいは出力電圧が低下し、DC24システムが全停止して機器が故障する恐れがあります。

短絡時に、先に主電源の保護回路のほうが作動し、その結果として24V系統が全停止してしまうことがある。
CPは作動しないので、故障個所も分からず、復旧作業も大変だ。

 

そうなると、故障を見つけるために、経験のある作業員を現場に派遣しなければならず、人件費が発生します。
またCPが反応していないため機械の全系統を調べなければならず、復旧の手間も増えます。
もちろんその間は機械を停止しているため、生産性にも支障をきたすことになります。

次に②の場合ですが、24V系統が同時ONになると、主電源への各系統からの突入電流が合算され、電源の短絡保護機能が働くことがあります。
また、すべての系統に電流が引っ張られるため電圧降下が起こります。そのためPLCが動かなくなったり、電源が正常に立ち上がらない可能性もあります。
そこで電源には、大きな突入電流に対応できる大容量タイプが必要になり、コストアップにつながります。

24V系統が同時ONになると、主電源への突入電流が合算され、電源の短絡保護機能が働いたり、電圧降下が起こることがある。
場合によってはPLCが動かないこともある。

 

そこで電子式のCPを使えば、前と同じ理由でマイコン制御により、迅速に異常を検知して数msで遮断して、アラート信号をPLC側に入力でき、即座に故障個所も特定することが可能になります。
これによりダウンタイムも短縮できるわけです。

また24V系統が同時オン時の突入電流についても、電子式CPでは「カスケーディングスタート機能」が付いた製品で解決できます。
分岐回路が立ち上がるとき、数10msぐらいずつ時間をずらして起動できる機能です。
突入電流を分散し、主電源への負荷を軽減することが可能です。これにより突入電流を考慮した大容量電源を選定する必要もなくなり、コストを抑えられるわけです。

電子式CPでは「カスケーディングスタート機能」が装備された製品がある。
これにより、24V系統を数10msぐらいずつ時間をずらして起動できるので、突入電流が分散される。

 

次回は課題4と5の原因と解決策、さらにすべてのCPの課題を解決できるドイツ製の電子式CPについてもご紹介する予定です。次回もお楽しみに!

今回ご紹介した製品
詳細は下記資料からダウンロード頂けます

資料ダウンロードはこちら

前の記事を読む  次の記事を読む≫

お問い合わせ

関連製品

関連カテゴリ

新着記事

戻る