【設備・機械を止めないために】DC24V電源(スイッチング電源)システムで設備の安全・安心を担保しよう(その2)
2023/01/16
- Murrelektronik
砂川 裕樹
前編その1では、高信頼性かつ高可用性の電源システムによって、ラインの機械や設備を正常に運転するために考慮すべきこと、すなわち「ノイズ除去」と「電源停止時バックアップ」に焦点を絞って解説してきました。後編では、万が一、電源自体がダウンしたとしても生産の継続性を担保できる仕組みとして「電源の冗長化」について説明しましょう。
【目次】
電源の冗長化/並列化の違いと、電源の交換周期を伸ばす方法
電源が故障してしまった場合に有効な冗長構成と、その注意点とは?
Murrelektronik社のアクティブ冗長運転ユニットで電源の高寿命化を!
3つの工夫によって、可用性を高くする電源システムを構築しよう!
電源の冗長化/並列化の違いと、電源の交換周期を伸ばす方法
複数の電源を接続する際には、冗長運転と並列運転があります。両方とも電源を並列には接続しますが目的が異なるので、もう一度振り返ってみましょう【★図1】。
冗長化運転と並列化運転の違い。両方とも電源を並列に接続するが、冗長化運転は主電源が故障したときに他電源で供給し、並列運転は電源の出力を増やすことが目的だ。
冗長運転とは「バックアップ運転」とも呼ばれ、1つの電源が故障したときに、もう1台で電源を供給することが目的になります。
冗長運転で、たとえば負荷側に10Aの電源×2台を並列接続した場合、10A×2で20Aを出力できるのでは? と思われるかもしれませんが、あくまでもう1台の電源は冗長化のためのバックアップであり、負荷の最大値は10Aになります。
一方、並列運転とは出力を増やすことが目的なので、10A+10Aで計20Aを出力できるようになります。
ここで注意したい点は、1つの電源が故障した場合に、もう1つの正常な電源からしか電力が供給されないので、このときは最大10Aとなってしまいます。
つまり、ここでは冗長化対策が施されてないことになります。
電源の冗長化については、「冗長化を実施しているが、電源の交換周期が早い」という課題が挙げられます。
これについて詳しく説明する前に、電源の寿命について簡単に触れたいと思います。
電源の交換周期を伸ばす方法
電源は複雑で、さまざまな部品から構成されています。この中で最も寿命の短い部品が「アルミ電解コンデンサ」です。
このコンデンサーの寿命は、周囲温度、および電源本体の温度が大きく関わってきます。
「アレニウスの法則」によると、10℃温度が下がると寿命が2倍になります。
下図のとおり、縦軸が電源本体の温度(コンデンサの周囲温度)で、横軸が寿命とすると、温度80度の場合は約2800時間の寿命、温度が70℃では約5500時間、さらに60℃では約11000時間となり、寿命が2倍になることが分かります。
つまり温度を低く抑えることが、電源の冗長化の交換周期を伸ばすベーシックな解決方法になります。したがって、電源の温度を上昇させない工夫が非常に重要となります。
電解コンデンサの周囲温度と寿命の関係。電源の部品で最も寿命が短いのが電解コンデンサ。この寿命には周囲温度と電源温度が関係し、寿命は「アレニウスの法則」に従う。
電源が故障してしまった場合に有効な冗長構成と、その注意点とは?
次に冒頭で触れたように、電源が故障してしまった場合の対処方法について説明します。
一般的に用いられる冗長運転では、電源が2つ並んでいますが、同じ電源を用いたとしても、厳密には出力電圧には差が発生します。
ただし、電源によっては調整用のトリマーが付いているため調整は可能です。
しかし、やはり工数もかかりますし、経時変化によって、また電圧を測って再調整することになります。
両方の電源の出力に差があり、たとえば1つの出力が24.05V、もう1つの出力が23.9Vとすると、出力の高い電圧だけが電力を供給し、もう一方は出力しないため、結果として一方の電源だけ100%負荷に近い状態になります。
すると電源本体が高温になり、電源寿命が短くなってしまいます。
また、出力電流が大きくなると、もう一方の(低出力の)電源に電流が逆流する恐れがあるため、冗長運転の際はダイオードの挿入が推奨されます【★図3】。
冗長運転の課題。電源出力にバラつきがあると、一方の電源に負荷が集中。電流の逆流も起きるので、順方向しか電流を通さないダイオードが必要。しかし熱損失が大きく、電圧が降下する。
このダイオードは、メーカーが推奨品を用意していないため、ダイオード取り付け基板を別途用意するなど、面倒な作業と自己責任を伴います。
これを回避するために、DINレールに取り付けられる冗長運転ユニットがあります。
ただし、それを採用しても、ダイオードによる熱損失が大きく、電圧が降下してしまうため、電源トリマーで電圧を少し大きな値になるように調整する工夫が必要になります。
このような冗長構成にすると、一方の電源が壊れた場合でも、もう一方の電源がバックアップとして働きます。
ただし、電源が故障したかどうかはアラームで検出できず、制御盤を開けるまで分からないため、対策が遅れてしまうことがデメリットになります。
Murrelektronik社のアクティブ冗長運転ユニットで電源の高寿命化を!
そこで提案したいのが、Murrelektronik製のアクティブ冗長運転ユニット「MB Redundancy Balance」です。
本製品は、電源の出力を50%ずつバランスよく常時50%に配分します。これにより発熱量が低く抑えられて、より電源が長持ちするのです【★図4】。
MOSFETを採用したアクティブ冗長運転ユニットの場合は、熱損失が少なく、冗長化された電源を均等に出力してくれるほか、故障時のアラーム機能もある。
さらに本製品は、半導体の素子としてMOSFETを採用しているため、ダイオードと比較して非常に省エネになります。
たとえばMurrelectronik社で実験した電源周りのサーモグラフの結果は以下の通りです【★写真5】。
電源周りのサーモグラフの結果。赤い部分が温度が高い=電源が稼働しているところ。アクティブ冗長運転ユニットのほうが、両電源がバランスよく稼働し、温度も低いことが分かる。
ダイオードを用いた冗長運転では、2台のうち1台のみが100%電源を供給し、その温度が74℃であることが分かります。
一方、MOSFETの冗長ユニットは、両方の電源出力が均等になり、温度も57.9℃で、約16℃も低くなります。
そのため電源の寿命も2倍以上になり、電源の交換周期も伸びるわけです。
また本製品は、アラーム接点がついているため、冗長運転の際に電源が正常に動いていることが分かります。
両方の電源が50%で正常にバランスをとって運用されるように、そのバランシング設定の機能も付いています。
このほかLEDによる状態確認も可能です【★写真6】。
Murrelektronik製の「MB Redundancy Blance」の主な仕様。冗長運転はもちろん、冗長時の出力バランス調整機能、電源故障アラーム出力機能もある。
3つの工夫によって、可用性を高くする電源システムを構築しよう!
今回は、可用性を高める電源システムの工夫についてご説明しました。
前編の話も含めてまとめてみると、3つの方法があります。
まず1つ目は前編の冒頭で解説した方法です。
電源の駆動回路に起因するノイズの影響を防ぐために、EMCフィルターを設置すること。また適切なシールド処理を施すことも大切です。
2つ目は一次電源の瞬停、もしくは瞬断に備えて「バッファーモジュール」や「UPSコントローラ」を設置すること。
そのとき負荷の容量や、出力を保持したい時間に応じて、対策を講じることになります。
3つ目は今回ご説明した通り、もし1台目の電源が故障しても、もう1台のバックアップ電源で運転を継続する冗長運転ユニットを採用することです。
この際、内臓の半導体素子はダイオードでなく、電界効果型のMOSFETを用いたアクティブ冗長運転ユニットを推奨します。
弊社が提案する可用性アップの電源システム。ノイズ対策、バックアップ電源、瞬停・停止に備えるバッファーやUPSコントローラという3つの対策で万全を期す。
このように弊社では、電源システムの可用性を最大限に高めるために、さまざまなご提案をさせて頂いております。
カタログも用意していますので、ご相談いただければ、お客様のニーズに応じた製品を選定させていただきます。
ぜひ弊社(info@kmecs-automation.jp)までご連絡下さい。
今回ご紹介した製品の |
砂川 裕樹プロダクトマネージャー
Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。
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