設備・機械を止めない! 可用性が向上するDC24V電源システムで設備を安全・安心に

2022/12/12

  • セミナーサポート
  • Murrelektronik

砂川 裕樹

「可用性」という言葉について、あまり聞き覚えがない読者様も多いかもしれません。
ここでは可用性を「いかに機械や設備を正常に稼働できるのか、その時間の割合」として定義しておきましょう。
つまり信頼性が高い電源システムによって、機械や設備を正常に運転できるかどうか。それを達成するためには、どうすべきかという点をご説明しましょう。


【目次】
電源システムの可用性を向上させるための3条件と各種コンポーネント
駆動回路に起因するノイズから、機器不良を防止しよう!
一次側電源の電圧低下による二次側の電圧降下、または瞬停を防止するには?
 【1】電源自体に具備されている出力保持機能を利用する
 【2】コンデンサを用いたバッファーモジュールを使用する
 【3】鉛蓄電池を用いたUPSコントローラを採用する


電源システムの可用性を向上させるための3条件と各種コンポーネント

まず可用性が高い電源システムの条件を3つ挙げるとすれば、以下のようになるでしょう。

【1】モータ、またはインバータなどの駆動回路に起因するノイズによって、機器不良を起こさないこと
【2】一次側の電源ラインに何か異常があっても、安定して電力供給が行われること
【3】突発的な電源故障に備えて、冗長化対策が講じられていること

実は弊社では、これらの要件に該当する製品として、ドイツ・Murrrelektronik社の「EMCフィルター」「バッファーモジュール & UPSシステム(+鉛蓄電池)」「冗長運転ユニット」を取り扱っています。
Murrelektronik社は、ドイツの制御機器メーカーとして知られており、世界50ヵ国で製品を販売しているグローバルカンパニーです。
本社工場を含めて世界に5つの生産拠点があり、主な製品群として「制御盤内機器」「各種インターフェース」「I/Oシステム」「コネクタ&ケーブル」を製造・販売しています。

これらの製品群のうち、今回のテーマである「電源システムの可用性を向上させる各種コンポーネント」は、制御盤内機器に含まれるものになります。
弊社は、Murrelektronik社の総合代理店として、各種コンポーネントを組み合わせ、以下のような電源システムをソリューションとしてご提案しています。

弊社が提案する可用性アップのための電源システム。「ノイズ除去」「冗長構成」「電源停止時バックアップ」という3つのアプローチがある。

ここからは、これらの構成要素について1つずつ紹介していきましょう。

駆動回路に起因するノイズから、機器不良を防止しよう!

まず筆頭でご説明したいのが、モータやインバータなどの駆動回路に起因するノイズからの影響を防ぐ「EMCフィルター」です。
悪影響を及ぼすノイズには、モータなどからケーブルを伝わる「伝導ノイズ」や、空気中を伝わってくる「放射ノイズ」があります。
EMCフィルターで解決できるのは、前者の伝導ノイズです。
ノイズ発生源と受信側の前にEMCフィルターを置くことで、ノイズを抑制できるようになります。

ノイズ発生の経路。ノイズの種類には、伝導ノイズと放射ノイズがあるが、今回は伝導ノイズ対策の製品について紹介する。

この際、適切なシールド処理を行う必要があります。
シールド処理で注意したい点は、ケーブルの長さを短くして、低インピーダンスに保つことです。

またノイズ(高周波電流)が導体に流れるときは「表皮効果」が出ます。
これは相互インダクタンスにより、導体の中心よりも表面に近い部分に高周波電流が流れやすくなる現象です。
そのため三線のアース線では線の太さよりも表面積が重要になります。
ノイズの規制が厳しい欧州では銅編組シールドが使われることが多いです。

EMCフィルターには、三相や単相に使われるフィルターなどがありますが、いずれもケーブルから伝わるノイズをカットしたり、ノイズ干渉による機器不良を防止したりすることが可能です。
フィルターを設置すると高周波成分のノイズを除去していることが周波数特性グラフから読み取れるでしょう。

駆動回路に起因する高周波ノイズから機械や機器を保護するために、EMCフィルターを設置する。またノイズ干渉による機器不良も予防。

一次側電源の電圧低下による二次側の電圧降下、または瞬停を防止するには?

たとえば三相電源から一次側に単相電源を取り出しているとき、一次側電源に何か異常が起きると、負荷(機器)側の出力が足りなくなったり、最悪の場合は機器が停止してしまったりする恐れがあります。
そこで一次側にトラブルが発生しても、二次側の出力を保持できる仕組みが求められます。
このとき機器(負荷)が必要とする電流容量(A)と、どれだけ長く出力を保持するかによって、ご提案できるソリューションが3つあります。

何らかの原因で一次側の電圧が低下し、二次側の電圧降下や瞬停が起きても継続運用できるように、出力を保持できる仕組みが必要だ。

【1】電源自体に具備されている出力保持機能を利用する

もともと電源自体がサポートする機能なので、これが最もシンプルで低コストな解決法といえます。
たとえば、弊社が取り扱っているMurrelektronik社の代表的な電源「Emparro」の場合は、出力を最低30ms保持することが可能です。これにより瞬停には対応できます。
しかし、これ以上の停止や電圧低下でも対応したい場合は、次のような対策が必要になります。

一次側の電圧低下による二次側の電圧降下、瞬停からの保護その1。超短時間であれば、電源に備わっている出力保持機能が使える。

【2】コンデンサを用いたバッファーモジュールを使用する

電源の二次側に直列でバッファーモジュールを取り付ける方法があります。
長寿命のコンデンサに蓄えられた電力を使用するので、ある程度の時間の供給を保証してくれます。
負荷が産業用PCの場合は、シャットダウンまでの電力の供給も可能です。
またバッファーモジュールには、アラート出力による検知機能が付いている製品もあります。
もし電源やバッファーモジュール自体に何か異常があったとき、このアラート出力をPLC側に送ってアクションを起こせるでしょう。

一次側の電圧低下による二次側の電圧降下、瞬停からの保護その2。短時間であれば、コンデンサを用いたバッファーモジュールを使う。

Murrelektronik社のバッファーモジュールには、供給容量(1~40A)と保持時間(0.2秒~6分)によって、数多くのラインナップが用意されています。
より保持時間を長くしたい場合は、バッファーモジュールを並列につなぐことで解決できます。

【3】鉛蓄電池を用いたUPSコントローラを採用する

この方法は、UPS(無停電電源システム)を導入する方法になります。電源の二次側にMurrelektronik社のUPSコントローラと鉛蓄電池を取り付けて、バッファーモジュールよりも長時間のバックアップを実現する方法です。
鉛蓄電池の容量によっては、数時間の出力を確保することが可能です。

一次側の電圧低下による二次側の電圧降下、瞬停からの保護その3。長時間であれば 鉛蓄電池を用いたUPSコントローラを利用したい。

UPSコントローラには、取り付けたバッテリ(鉛蓄電池)の異常を検知する機能や、センサを取り付けてバッテリの充電タイミングをコントローラが知らせてくれる機能もあります。
これによりバッテリの長寿命化を実現できます。
さらにコントローラのUSB端子に産業用PCを接続し、一次電源の異常が発生したときに、専用ソフトを使って産業用PCを安全にシャットダウンする機能も用意されています。

最後にバッファーモジュールとUPSコントローラの選定目安の一覧表を示しておきます。

バッファーモジュールとUPSコントローラの選定目安の一覧。求める電源容量と保持時間の関係から最適な製品を選べる。

詳細につきましては、弊社窓口(info@kmecs-automation.jp)までお問合せ下さい。


今回ご紹介した製品
製品詳細・型番は下記資料からダウンロード頂けます

資料ダウンロードはこちら

★★オンラインショップにて掲載中★★
Murrelektronik社のスイッチング電源の弊社在庫型番をオンラインショップに掲載しております。
https://shop.kmecs-automation.jp/c-item-detail?ic=MURR001
この機会にぜひチェックしてください!




次の後編では、電源の冗長化構成に関するお話をさせていただく予定です。お楽しみに!



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砂川 裕樹プロダクトマネージャー

Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。

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