簡単・安心な制御盤の配線作業とメンテナンスを実現するバルブコネクタ〈前編〉

2021/12/06

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ニランカ・ゾイサ

今回はソレノイドバルブ(電磁弁)を導入する際に考慮したいポイントを中心に解説します。
製品選定の際にコストは重要な決め手の1つとなりますが、そのほかにも注意したいポイントがあります。
配線の作業性やメンテナンス性、機能性を見ながら、自社に最適な製品をチョイスしましょう。


【目次】
ソレノイドバルブ(電磁弁)の配線方法の比較
ソレノイドバルブの開閉の際に発生するサージ対策をどうする?
サプレッサの種類
 ■ダイオード
 ■ツェナーダイオード
 ■バリスタ
 ■RC(Resistor Capacitor)


ソレノイドバルブ(電磁弁)の配線方法の比較

ポンプから送り出された作動油の方向や流量を調整する装置が、ソレノイドバルブ(電磁弁)です。
ソレノイドバルブの内蔵コイルに電流を流し、弁を開閉することで、作動油の方向などを切り替えられます【★写真1】。

【★写真1】油圧バルブの働き。作動油の方向や圧力、流量を制御する。機器によって、機械制御する場合と電気制御で動作する場合がある。

このソレノイドバルブを配線する方法として、一般的にM8/M12コネクタ型、DINコネクタ型、ターミナルボックス型、ドイチェコネクタ型、片端バラのケーブル付きタイプなどがあげられます【★写真2】。

【★写真2】電磁バルブの取り付け方法。複数のタイプがある。ちなみに写真のドイチェコネクタはドイツの老舗メーカーDEUTSCHからのもの。DINはドイツ規格協会に準拠したもの。

幅広く使われているDINコネクタ型ソレノイドバルブの場合は、製造現場において結線作業が必要になるため、コネクタの組み立部品数が多い、配線方法が複雑、シーリングなどに注意する必要があるなど、かなり配線工数がかかるという課題がありました。

シングルソレノイドバルブのDINコネクタ結線には、制御信号と、0Vを含むFE(ファンクショナルアース)の合計3本のワイヤリングが必要です。
さらに、双方向の移動が可能なダブルソレノイドバルブを配線する際には、それぞれ2つのDINコネクタ結線をする必要があり、計6本のワイヤリングが必要になります【写真3】。

【★写真3】ダブルバルブを現場で配線する際の作業。制御信号、動力線、GNDの合計3本、さらにダブルで計6本のケーブルを結線する必要がある。

しかし、DINコネクタの結線がはじめから済んでいて(アッシー済)、モールド加工によってIP67が保証されている製品であれば、製造現場におけるさまざまな作業が省略されることで大幅に配線工数を削減することができます。

実際にアッシー済のDINコネクタが発売されていますので、そのメリットについて示しましょう【★写真4】。

【★写真4】弊社で取り扱っているMurrelektronik社製のアッシー済のDIN型コネクタ。機能性、作業性に優れている

ただ、導入するにもコストが気になりますよね。そこで従来製品と比較してみました。
製品単体では従来品のほうが安いのですが、製品単価ではなく、配線工数まで考慮することが大切です。

ダブルバルブで3mのハーネスケーブルを取り付けたケースを見てみましょう。

・ケーブル:450円(@m)×3m×2本=2700円
・結線工数:3000円(@1hの作業単価)×1/6(両端の結線作業10分とする)×2本=1000円

このように見積もると合計3700円となります。

つまり、工数まで含めるとアッシー済DINコネクタのほうが、従来品よりも安上がりになるケースもあるということです【★写真5】。

【★写真5】アッシー済のDIN型コネクタと従来品とのコスト比較。単品の値段でなく、作業コストも含めて比較するほうがよい。

アッシー済のDINコネクタの利点は配線作業の簡易化、コスト削減だけではありません。
ダブルソレノイドバルブの制御に必要な制御信号2本と0Vを含むFEが、1本のケーブルにまとまっているため、従来のシステムの省配線化が可能です。

M12コネクタが搭載されている省配線ボックスを使用し、規定トルクを管理できる専用トルクレンチで六角ナット部を締め付ければ、コネクタの組み立てや交換が容易になり、防塵・防水保護等級のIP67を確保できるなど、作業を標準化し更なる省配線システムを実現することができます【★写真6】。

【★写真6】省配線化も可能なアッシー済のDIN型コネクタ。1本のケーブルに信号線と動力線がコネクタでまとめられ、省配線ボックスを介してワンタッチで着脱できる。

省配線の効果は、バルブが多くなるほど発揮できます。4つのバルブを接続した場合を以下に示します。ダブルバルブ用DINコネクタを使うことで、いかにケーブル周りがスッキリするか、ご理解いただけるでしょう【★写真7】。

【★写真7】4つのバルブを接続した場合。従来品および、アッシー済のDIN型コネクタの配線の比較。使用バルブが多いほど、省配線の効果を発揮する。

ソレノイドバルブの開閉の際に発生するサージ対策をどうする?

ソレノイドバルブを開閉する際には、内蔵コイルに流れる電流のオン・オフを繰り返します。

コイルに流れる電流をオン・オフする際に、サージが発生する場合があり、このサージ電圧が定格電圧の何十倍にもなることもあります。
高サージ電圧によって、制御回路がダメージを受け、最悪の場合は制御回路が壊れてしまうこともあります。

そこでサージ吸収用のデバイスとして「サプレッサ」を取り付けると、サージによる回路全体の影響を抑えられます【★写真8】。

【★写真8】バルブを開閉する際に発生する逆起電力とノイズ。回路全体に悪影響を及ぼすことがあるので、サプレッサなどで対策が求められる。

サプレッサの種類

具体的なサプレッサとしてはダイオード(ツェナーも含む)、バリスタ、RC(抵抗・コンデンサ)に大別できます。それぞれについて簡単に説明しましょう【★写真9】。

【★写真9】サプレッサの種類。ダイオード、バリスタ、RCなどがあるが、それぞれ極性や特性があるので、メリットを考えて選択するとよい。

■ダイオード

ダイオードは決まった方向(順方向)にしか電流を流さない電子部品で、逆電圧がかかっても電流は流れません。
サージ電圧をダイオードの順方向になるように設置することで、サージ電圧から制御回路を守ることができます。
サージ電圧がなくなるまでの復帰時間が長い分、制御回路にかかる電圧も小さくなります。
ダイオードは単純な電子部品であるため長寿命という特性があります。

■ツェナーダイオード

ツェナーダイオードはAC/DC両方に使用できます。逆電圧がかかった時に、ある一定以上の電圧(ツェナー電圧)をカットしてくれます。しかし、それ以下の電圧はカットできませんので、ツェナー電圧に達するまでのサージ電圧が制御回路にかかってしまいます。
こちらはダイオードに比べて復帰時間がより短く、長寿命です。

■バリスタ

バリスタも極性がなくAC/DC両方で使用できます。高いサージ吸収力があり、復帰時間が短いです。

■RC(Resistor Capacitor)

RCも極性はありませんが、どちらかというとAC回路に適しています。
ただ負荷に合ったパラメータとして、抵抗とキャパシタンスの値を設定する必要があります。
デバイスに抵抗やコンデンサなど複数の電子部品を使うため、それなりにスペースが求められます。

しかし心配は無用です。
弊社で取り扱うMurrelektronik社のバルブコネクタ全製品には、サージを吸収するサプレッサが基本的に内蔵されているため、安心してご利用できます。

また、ご使用中のバルブコネクタにサプレッサが内蔵されない製品であっても、後からサプレッサを取り付けられる製品も多数用意しております【写真10】。

次回は、ソレノイドバルブ(電磁弁)の具体的な取り付けの流れと、関連製品のフロントパネルインターフェース(防水カバー)についても併せてご紹介する予定です。


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