産業用配線の“困りごと”解決講座(第9回目)
2017/07/31
- Murrelektronik
砂川 裕樹
【困りごと、その6】こんなに簡単でいいの?急な機械構成変更や多品種量産化するコツ
前回は特別編として、東京ビッグサイトにて開催された「MF-Tokyo2017」の展示内容について触れました。また今回は元に戻り、フレキシブルIP67 I/Oシステム・CUBE67の導入メリットについてご紹介しましょう。
さて、4つ目のメリットですが、CUBE67には「Machine Options Management」(以下、MOM)と呼ばれる便利な独自機能があります。このMOM機能とは一体どんな機能なのでしょうか? 端的に説明しますと、「PCを接続せずに、PLC側からIOモジュールの増減設定をコントロールし、機械量産時の工数を大幅に削減できる機能」といえるでしょう。
MOM機能が活用できる想定シーンを挙げてみましょう。たとえば、構成が異なる機械を量産する際に大きな威力を発揮します。実は汎用工作機械はお客様の用途に合わせて、オプション構成で提供されることが多いのです。
機械Aは2つのオプションで構成され、機械Bは異なる3つのオプションで構成される場合、工作機械を量産するときに、いちいちオプション構成に合わせて設定を変えていては非常に面倒です。そこで想定されるオプション構成を、CUBE67側に事前に組み込んでおき、それらの情報をもとに、必要に応じて機器構成を設定できるようにしておけば、多品種の量産工程がスムーズに回るようになります【★写真1】。
【★写真1】MOM機能の活用例その1。構成が異なる機械を量産するケース。構成Aは、CUBE67の右下のバスノードからリモートIOモジュールが追加されており、構成Bは右上のバスノードに異なるオプションが追加されている。量産時に、構成Aや構成Bを随時切り替えることで、多品種の量産工程がスムーズになる。
また、逆にMOM機能を活用すれば、お客様が工作機械を導入後に「やはり、このオプション機能も欲しくなった!」ということがあっても安心です。現場にサービス要員が向かい、オプションを追加できるように、MOM機能によってフルオプションの中から、必要な設定を手軽に変更できるからです。このように新たに機械構成を変更したくなったときも、MOM機能が役に立つのです【★写真2】。
【★写真2】MOM機能の活用例その2。新たに構成Aにオプション品を追加したい場合にも便利。すでにフルオプション構成が組まれているため、サービス要員が現場に向かい、スムーズな構成変更を可能にする。
32ビットに割り当てたフルオプションの設定ファイルから自在に選択
では、もう少し詳しくMOM機能を深掘りしてみましょう。たとえば、設計フェーズにおいて、ある工作機械の基本構成に対して、チップコンベアや自動パレット交換装置(APC:Automatic Pallet Changer)、フィーダーといった追加オプションが用意されていたとしましょう。
このとき事前に想定される追加オプション構成を、CUBE67側で1つのコンフィギュレーション・ファイルとして、まとめて設定しておきます。これを「フルオプション構成」と言います。CUBE67にはWebサーバが搭載されているため、ブラウザー上から、これらの設定が簡単に行える仕組みです。そしてフルオプション構成の中から、利用したい構成(利用しない構成)を随時選択するだけで、スムーズな量産化が可能になります。もちろん機械運転中でもオプション変更に対応できます【★写真3】。
【★写真3】MOM機能の設定の流れ。CUBE67にはWebサーバが搭載されているため、ブラウザ上から設定が簡単に行える。フルオプション構成の中から利用しない構成を随時選択し、該当ビットを0にするだけでよい。
つまり本来であれば、いちいちお客様の機械仕様に合わせて、オプションの設定ファイルを作り変えなければならなかったのですが、このMOM機能を使えば、それらの設定を一括してフルオプションとして用意し、臨機応変に多品種の量産化を実現できるわけです。
ちなみに必要なオプションの無効化/有効化は、出力プロセスデータに割り当てられた6バイトのMOM領域のビットのオン/オフで制御できます。これら6バイト=48ビットのうち、前半の4バイト(32ビット)分が、CUBE67に接続された最大32個のモジュールに対応しています。そこで【★写真4】のように、フルオプション構成のうち、たとえば6番のオプションモジュールを使わない場合は、PLC側から5ビット目をオフにしておけばよいのです(0ビットから始まるため、オプション番号は1つズレますから、注意してください)。
【★写真4】フルオプション構成の中から利用しない構成を随時選択する。たとえば[bit 5]を[ON]にすることで、オレンジ枠内のモジュールが無効になる。つまりMOM機能は、すべてのオプション設定を事前に用意し、不要なオプションを「引き算で減らす機能」ともいえる。
このようなMOM機能により、IOモジュールの増減設定をPLC側から制御し、フルオプション構成から、必要なときに必要なシステム構成を選択できるようになるわけです。MOM機能は、インダストリー4.0やIoT時代に、多品種の製品を生み出す自動化の大きなヒントになるものといえるでしょう。CUBE67を採用した際には、是非このMOM機能を使って、生産工数の大幅な削減と、運用負荷の軽減を実現してください。
次回はCUBE67のメリットの最後である「現場における作業工程の標準化」についてご紹介する予定です。
砂川 裕樹プロダクトマネージャー
Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。
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