産業用配線の“困りごと”解決講座(第6回目)
2017/04/24
- Murrelektronik
砂川 裕樹
【困りごと、その4】制御盤の小型化!?CUBE67を導入し、よりコストを削減するコツ
引き続き、Murrelektronik社のフレキシブルIP67 I/Oシステム・CUBE67を導入することで得られるメリットについてご紹介しましょう。前回は、CUBE67によってケーブル類がコネクタ化され、省配線化と配線作業の簡素化により工数が減り、最終的なトータルコストも削減できることを示しました。
今回は、制御盤内の省スペース化、あるいは制御盤自体の小型化についてお話ししたいと思います。
実は、このテーマについては、お客様からのお問い合わせも多く、実際にCUBE67を導入したのちに、とても喜んでいただける特徴のひとつになっています。制御盤が小型化されることで、コストダウンという点でも、副次的な効果が得られるからです。
さて、従来の制御盤をのぞいてみましょう。
【★写真1】従来のパラレル通信によるシステム構成。制御盤内にケーブルが直接配線されるため、非常に煩雑で部品点数も多い。結果として制御盤のサイズも大きくなってしまう。
【★写真1】のように、多くの端子台が配置されていることがわかります。なぜ、これほど多くの端子台が制御盤に詰め込まれているのでしょうか?
それは、エッジ側のセンサやアクチュエータがパラレル通信であるため、すべてのケーブルが制御盤に集中してしまうからです。もちろんセンサの信号を受けるために、盤内にはPLCのIOモジュールが取り付けられます。
特に端子台は、ひとつのセンサとIOモジュールの1チャンネルが対になって使われるため、I/O点数が多い場合、制御盤内の3分の1以上のスペースを取ってしまうこともしばしばあります。もちろん引き込まれるケーブルを端子台に結線して、そこにマークチューブなどを入れたりするなど、面倒な作業も発生します。
さらにパラレル通信では、どうしてもケーブルが多くなってしまうので、配線をまとめるためのダクトも大きくなってしまうのです。
当然のことですが、部品点数が多くなればなるほど、その分のコストがかかりますし、盤内が煩雑になるため、作業工数も多くなってしまいます。またメンテナンスも面倒になります。
これに対して、CUBE67を利用した際のシンプルな構成を【★写真2】に示します。これまで必要だった端子台が不要になり、制御盤の内部が非常にスッキリしていることが分かります。
【★写真2】CUBE67を導入した、シリアル通信によるシステム構成。エッジのデバイスを制御盤外のIOモジュール側につなぎ
これほど制御盤が小型化できる理由について順を追ってご説明しましょう。
まずCUBE67では、制御盤の外側に置かれたIOモジュールによって、エッジ側のセンサやアクチュエータ類の信号を取り込みます。ここで各IOモジュールの信号は、シリアルのローカルバスに変換され、いったんCUBE67バスノードに集約されます。さらにCUBE67バスノードで一般的なフィールドバスに変換してから、PLC側に送られるという流れです。
つまりIOモジュールより上位側は、すべてシリアル通信でやり取りされるわけです。従来のように、エッジ側のセンサなどのケーブルを直接制御盤に引き込む必要はありません。
ここまでの通信の流れを整理すると、
・エッジ側の各センサやアクチュエータ→IOモジュール(パラレル→シリアルのローカルバス)
・IOモジュール→CUBE67(シリアルのローカルバス)
・CUBE67→制御盤内のPLC(シリアルのフィールドバス)
となります。
このようにシリアル通信になることで一本のバスケーブルにI/O信号が集約するため、制御盤につながれるケーブルも激減するわけです。
CUBE67では、制御盤から盤外に出すケーブルはバスノードに接続されるフィールドバスケーブルと24V電源ケーブルの2本のみです。
またバルブなどを駆動するためのリレーについても、IOモジュール内にアンプやヒューズが内蔵され、24V・2.0A出力に対応するラインアップもあるため、不要になります。
さらにIOモジュールの保護等級はIP67のため、フィールドでI/Oを取り込むための中継箱も必要ありません。
このように制御盤内でケーブルが少なくなり、端子台も中継箱もリレーもなくなってしまうため、場合によっては従来の半分以下のスペースまで小型化を実現できることもあります。無駄な部分がなく、電気部品も作業工数も検査工数も減り、副次的にトータルコストの削減に寄与してくれるのです。
CUBE67の導入によって不要になる部材をまとめると、
・端子台
・ヒューズ
・リレー
・PLCのIOモジュール
・中継箱
・それらの設置作業
となります。
IoT時代になり、ますますセンサなどの情報を取り込んでいく機会も増えてきます。その際に従来どおりのパラレル通信でデータを伝送していると、ますますシステムが複雑化し、作業の手間もコストもかかってしまいます。また制御盤が省スペース化すれば、そのぶんを有効活用して、他の機能を取り込めるでしょう。
そこでCUBE67を導入し、省配線化を実現し、可能な限り制御盤をシンプルな構成にすることをお勧めしています。次回は、CUBE67の3つ目のメリットとして、何かトラブルがあっても安心な「自己診断機能」についてご紹介する予定です。
砂川 裕樹プロダクトマネージャー
Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。
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