安全リレー vs CIP Safety|リモートIOとIO-Linkで変わる安全設計の常識
2026/04/30
- Murrelektronik
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ニランカ・ゾイサ/Nilanka De Zoysa
「安全回路はハード配線の方が安心なのか、それとも通信ベースに移行すべきなのか?」
設備設計や保全の現場では、今もこの問いに悩むケースが少なくありません。
特に近年は、EtherNet/IP上で安全通信を実現する「CIP Safety」の普及により、選択肢が広がっています。
本記事では、現場の不安の正体を整理しながら、安全リレーとCIP Safetyの違い・メリット・導入判断基準を技術視点で解説します。
目次
・現場の本音:なぜ通信ベースの安全は不安なのか
・しかし本当に「ハード配線=安全」なのか?
・安全通信の基本思想(重要)
・CIP Safetyとは何か?
ー主な安全機能
・従来の安全リレー vs CIP Safety リモートIO
・Murrelektronik「MVK Fusion CIP Safety」とは
・Why MVK Fusion?(主な特長と適用メリット)
・導入の判断基準:どちらを選ぶべきか?
・結論:安全の考え方は変わりつつある
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現場の本音:なぜ通信ベースの安全は不安なのか
安全リレーではなく、専用リモートIO(通信)を使いたい。しかし現場では、いまだに次のような声が多く聞かれます。
- 「安全リレーの方が慣れている」
「ハード配線の方が安心できる」
「通信は信用できない。すぐ途切れるのでは?」
「スイッチングハブが故障したら全停止では?」
「画像データと混在して通信が詰まらないか?」
「ノイズでデータが破損したら危険では?」
さらに踏み込むと、こうした懸念もあります。
- 非常停止信号と画像データが同じネットワーク上にある?
遅延したら事故につながるのではないか
これらの不安は、決して感覚的なものではありません。むしろ、安全設計の観点から見ても非常に妥当な懸念です。
しかし本当に「ハード配線=安全」なのか?
従来のハード配線にも、見過ごされがちなリスクが存在します。
- 端子台のネジ緩み → 接触不良による誤動作
配線本数の増加 → 誤配線リスクの増大
可動部での断線(ケーブル疲労・屈曲)
トラブル発生時、原因特定に時間がかかる
例えば断線や接触不良の場合、現場で1本ずつ確認が必要となり、復旧までに数時間以上かかるケースも珍しくありません。
つまり、「見えている=安全」ではなく、「異常を確実に検知できるか」が本質です。
安全通信の基本思想(重要)
通信ベースの安全において、最も重要な考え方は「異常が発生すること」を前提に設計するです。
- 具体的には、以下のような事象を常に想定します。
通信断(リンク断・機器故障)
データ破損(ノイズ・ビット化け)
通信遅延(ネットワーク負荷・輻輳)
そして、これらの異常が発生した場合でも、必ず安全側(停止状態)に遷移する設計(フェールセーフ)が実装されています。
CIP Safetyとは何か?
CIP Safetyは、EtherNet/IPなどの産業用ネットワーク上で安全通信を実現するための国際規格です。
通常の制御通信(標準I/Oデータ)とは独立した「安全専用レイヤー(セーフティプロトコル)」を重ねることで、同一ネットワーク上でも安全データを確実に識別・検証しながら伝送します。
この規格は、ODVA によって標準化されており、機能安全規格である IEC 61508 や ISO 13849 に準拠することで、最大で SIL3 / PL e レベルの安全性に対応可能です。
主な安全機能
CIP Safetyでは、通信の不確実性を前提として、複数の安全機構が組み込まれています。
|
機能 |
内容 |
|
時間監視(タイムアウト監視) |
一定時間内に応答がなければ異常停止 |
|
ID管理(ユニーク識別) |
通信相手を一意に識別(誤接続やなりすまし防止) |
|
CRCチェック |
データに誤りがないかを検証し、破損時は無効化 |
|
冗長化(セーフティーデータ) |
データを二重化して安全性確保 |
これらの仕組みにより、
- 通信が一瞬でも途切れる
データが1ビットでも異なる
想定外の機器と接続される
といった場合でも、必ず安全側へ遷移します。
通信が「信用できる」から安全なのではなく、「信用できない前提」で設計されていることが本質です。
従来の安全リレー vs CIP Safety リモートIO
従来の「ハード配線=安心」という考え方は、現在では必ずしも最適とは言えません。
ネジ緩みによる接触不良や、可動部での断線といった物理的リスクに対し、
ネットワークベースの安全システムは、異常を検知し、原因を特定できる“診断性”を大きな強みとしています。
特に保全性や復旧時間の観点では、両者に明確な差が現れます。
|
課題項目 |
従来の安全リレー(ハード配線) |
CIP SaFety リモートIO(改善後) |
|
配線工数 |
1対1の膨大な配線。工数大。 |
現場設置でLANケーブル1本に集約。 |
|
盤のサイズ |
リレー、端子台で盤が大型化。 |
安全機器を盤外へ。盤を最小化。 |
|
コスト |
大量の配線材と人件費が嵩む。 |
材料費・施工費ともにトータル抑制。 |
|
メンテナンス |
断線箇所の特定に数時間。 |
上位やLEDで異常ポートを秒速特定。 |
|
診断情報 |
「止まった」ことしか不明。 |
「なぜ、どこで」の詳細ログを取得。 |
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配線ミス |
端子接続によるミスが発生。 |
M12コネクタで物理的にミス排除。 |
|
柔軟性 |
物理的な配線やり直しが必要。 |
ソフトの設定変更のみでロジック変更。 |
|
グローバル対応 |
国ごとにハード設計変更が必要。 |
国際認証済み。世界共通設計が可能。 |
Murrelektronik「MVK Fusion CIP Safety」とは
こうした課題に対する具体的なソリューションの一つが、Murrelektronik の「MVK Fusion CIP Safety」です。
本製品は、分散型I/Oとして現場に直接設置できる構造を持ち、安全回路の設計・配線・保全における課題をまとめて解決できる点が特徴です。
特に、従来は別々に構成していた機能を1台に統合している点が大きな特長です。

図1:MVK Fusionの3-in-1構成(Safety/Standard IO/IO-Link)
Why MVK Fusion?(主な特長と適用メリット)
MVK Fusion CIP Safety は、分散型I/Oとして現場に設置できる構造を前提に、設計・配線・保全の各工程を簡素化できる点が特長です。
主なポイントは以下の通りです。
1. 3-in-1 統合Safety / Standard I/O / IO-Link: 「安全信号」「標準IO」「IO-Link」をこれ1台に統合。モジュール点数を削減し、設計・在庫・配線をシンプル化
2. 専用ツール不要(PLC側で一元設定): 既存の安全PLCエンジニアリング環境で完結し、教育・立ち上げ工数を低減。
3. IP67対応の堅牢構造(盤外設置): 油・振動のある現場でも使用可能。盤外分散により配線距離を短縮
4. 出力設定の柔軟性(P-P / P-M / Bipolar切替): 機種統一がしやすく、用途に応じた回路構成に対応(STO接続にも適用しやすい)

図2:CIP Safetyによる接続構成例(分散型安全I/O)
導入の判断基準:どちらを選ぶべきか?
ここまでの内容を踏まえると、安全リレーとCIP Safetyは「どちらが優れているか」ではなく、用途と設計思想によって使い分けるべき技術です。
【ハード配線(安全リレー)が適するケース】
- 装置が単体で完結し、他と連動しない。
安全入力(非常停止等)が少数(目安:10点以下)。
「押せば全停止」のようなシンプルな回路構成。
→シンプルで変更が少ない設備では、従来方式が合理的です。
【CIP Safetyを導入すべきケース】
- 配線距離が長い(目安10m以上): 多芯ケーブルよりネットワーク配線の方が施工性・コスト面で有利
「部分停止」などの複雑な安全制御が必要: 「Aエリアは止めるがBは動かす」等、エリア単位の制御や柔軟なロジック変更に対応
装置の分割・再組立がある(海外出荷・ライン再構築など): コネクタ接続で迅速に復旧可能
ダウンタイムが重要: 診断情報により、トラブルの早期特定と復旧が可能
→配線・保全・柔軟性が求められる現場では、CIP Safetyが有効です。
結論:安全の考え方は変わりつつある
日本独自のノウハウに基づく安全設計にも、これまで大きな価値がありました。
一方で、設備の高度化やグローバル展開が進む現在では、 国際規格に基づいた「共通言語」としての安全回路設計が求められています。
さらに、異常発生時の挙動も重要です。
従来は「確実に止まること」が重視されていましたが、現在はそれに加えて、
- なぜ止まったのか
どこで異常が発生したのか
どれだけ早く復旧できるか
といった運用面での安全性(=稼働率への貢献)が重要視されています。
「CIP Safety」を活用したシステム構成や導入に関する資料をご用意しています。
配線の最適化や現場改善のヒントとして、ぜひご覧ください。
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CIP Safety導入ガイド(無料)はこちら |
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ニランカ・ゾイサ/Nilanka De Zoysa
Murrelektronik社のプロダクトマネージャーを担当。
リモートIO、IO-Link、省配線などのご案件でお客様と日々やり取りをしています。
スリランカ出身ですが、日本在住歴は長く、日本語検定のN1を取得しています。
弊社の社員よりも日本語が堪能だと言われることもあります。
Murrelektronik社に関することは何でもお聞きください。
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